食器の素材・材質の種類|陶器・磁器・炻器・強化磁器を吸水性と強度で比較
「うちの店の器は陶器と磁器、どちらがいいのか」——ここまでは多くの人が調べます。ところが実際に業務用の食器を探し始めると、炻器(せっき)や強化磁器という言葉が出てきて、話が急に分からなくなる。
分類が増えて見えるだけで、実は分けている軸はシンプルです。吸水性と強度、この2つしかありません。
この記事では、食器の素材の種類を4つに整理し、それぞれが毎日の営業で何を変えるのかを書きます。強度については、産地の公的機関が公表している実数まで見ます。感覚ではなく数字で比べられるところは、数字で比べたほうが早いからです。
食器の素材は「吸水性」で並べると迷わない
まず全体像です。焼き物は焼く温度と素地の材料によって性質が変わり、大きく次のように並びます。
素材 | 吸水性 | 透光性 | 性格 |
|---|---|---|---|
陶器 | あり(多孔質) | なし | やわらかい印象・保温性が高い |
炻器(せっき) | 小さい | なし | 硬く堅牢・素地の表情が出る |
磁器 | なし | あり | 硬い・薄く仕上げられる |
強化磁器 | なし | あり | 磁器にアルミナを加えて強度を上げたもの |
上から下へいくほど素地が緻密になり、吸水しなくなります。業務用で効くのはこの「吸水性」です。 吸水する素地は、においや色を抱え込みます。逆に吸水しない素地は、洗えば元に戻ります。
なお、焼成温度は資料によって示される範囲に幅があります(炻器なら1,100〜1,250℃前後とされることが多い)。温度の数字を厳密に覚える必要はありません。順序と、その結果としての吸水性を押さえれば十分です。
陶器と磁器|分けているのは吸水性
いちばん基本の2つです。
陶器は素地が多孔質で、吸水性があります。空気を含むぶん熱が伝わりにくく、保温性が高い。手に持ったときの当たりがやわらかく、土の表情が出ます。一方で、磁器より欠けやすく、貫入(釉薬に入る細かいひび)から色が入ることがあります。
磁器は素地が緻密で吸水しません。薄く硬く仕上げられるため口当たりが軽く、光にかざすと透けます。叩くと高い音がします。
この2つの違いは、口当たりと保温性に直結します。詳しくは 陶器と磁器の違い に書きました。カップの保温を素材から考えるなら コーヒーが冷めにくいカップの条件 もあわせてどうぞ。
炻器(せっき)|陶器と磁器の中間にある器
炻器は英語のストーンウェア(stoneware)の訳語で、半磁器とも呼ばれます。陶器と磁器の中間的な性質を持ち、硬質で堅牢、そして吸水性が小さいのが特徴です(出典:炻器 - Wikipedia)。
業務用として見ると、炻器は扱いやすい位置にいます。磁器ほど硬質な印象にならず、陶器ほど吸水しない。 素地の風合いを残しながら、汚れとにおいのリスクを下げられます。通常は釉薬を掛けずに地肌の表情を見せることが多く、装飾は浮き彫りやレリーフで入れます。
「陶器の質感が好きだが、業務で毎日回すことを考えると吸水性が不安」——この悩みに対する答えとして機能する素材です。ただし呼び方が店やメーカーによって揺れるため、カタログに「炻器」と書かれていなくても実質は同じ、ということが起きます。名前ではなく、吸水性の表示を見てください。
強化磁器|アルミナで強度を上げた磁器
強化磁器は、従来の磁器の原料成分にアルミナを添加して素材強度を高めた磁器です。学校給食や病院など、割れると困る現場で広く使われてきました。
強度の差は数字で出ています。美濃焼の産地である土岐市が公表している曲げ強度の比較が分かりやすいので引用します。
種類 | 曲げ強度 |
|---|---|
普通の磁器 | 約800kgf/cm²(≒80MPa) |
粒度管理なしの強化 | 1,200kgf/cm²(≒120MPa) |
アルミナ混合 | 1,700kgf/cm²(≒170MPa) |
高強度磁器 | 2,300kgf/cm²(≒230MPa) |
普通の磁器と比べて2倍以上の開きがあります。 アルミナは化学的に安定していて1,300℃で焼いても結晶として残るため、これが増えると強度が上がる。さらに土岐市の解説では、強度低下の原因になる珪石の粒子をアルミナで完全に置換する、という踏み込んだ手法まで説明されています。
なお表にある「高強度磁器」は、昭和62年に土岐市が全国で初めて使った名称で、登録商標です。一般名詞ではないので、他社製品を指して使うことはできません。カタログで見かけたら、それは土岐市の枠組みで作られたものだと読んでください。
CAFORAが使っているもの
ここは正確に書きます。CAFORAが使っているのは「強化土」と呼ばれる素材です。上の4分類は素地の種類による分け方で、強化土がそのどれに当たるかを、私たちはここで断定しません。呼び方が産地や工房の慣習に依存する領域だからです。
代わりに、事実として言えることだけを書きます。
- チップ(欠け)に強い
- 食洗機・電子レンジに対応(業務用の連続使用を前提にしている)
- 1000年の歴史を持つ瀬戸・美濃焼の技術で焼いている
素材選びで私たちが優先したのは、分類上の名前ではなく毎日洗って毎日使っても欠けないことでした。ただし強度を優先した素材にはトレードオフもあります。実際、強化土は色の塗り分けの歩留まりが悪く、装飾の自由度は下がります。強さと自由度は同時には手に入りません。
産地ごとの製法の背景は 瀬戸焼と美濃焼の違いとは にまとめています。
業務用ではどう選ぶか
素材の分類が分かったところで、実務の判断軸に落とします。順番はこうです。
- 吸水性から決める|1日に何度も洗い、においの強い飲みものを扱うなら、吸水しない素地(磁器・炻器・強化磁器)が安全です。陶器を選ぶなら、貫入から色が入ることを許容できるかを先に決めてください
- 強度は表示と実物で確認する|「割れにくい」という言葉には基準がありません。曲げ強度の数値が公開されているか、食洗機・電子レンジの対応表示があるかを見ます(食洗機で欠けにくい業務用食器の選び方)
- 家庭用を業務で回さない|同じ「磁器」でも、家庭用と業務用では想定している使用回数が違います。この違いは 壊れにくい?業務用食器と家庭用食器の違い に整理しました
- 破損率で判断する|最終的に効くのは素材名ではなく、実際に何%割れたかです。測り方は カフェの食器の破損率はどれくらい? にあります
素材名で選ぶのではなく、素材が生む結果(吸水するか・欠けるか・洗えるか)で選ぶ。 これが一番外しません。
よくある質問
Q. 強化磁器なら割れませんか 割れます。普通の磁器より曲げ強度が高いだけで、無敵ではありません。落とせば割れますし、縁を打ち付ければ欠けます。強度は「割れる回数を減らす」ものであって、ゼロにするものではありません。
Q. 炻器と半磁器は違うものですか 炻器は半磁器とも呼ばれる、同じものを指す言葉です。ストーンウェアの訳語として使われています。
Q. 陶器は業務用に向きませんか 向かないわけではありません。保温性と質感は陶器の強みです。ただし吸水性があるぶん、においと色の管理が必要になります。回転が速く洗浄頻度が高い店ほど、慎重に判断してください。
Q. カタログに素材が書かれていない場合はどうすればいいですか 販売元に確認してください。少なくとも「吸水性の有無」「食洗機・電子レンジの対応」の2点は、業務用として扱うなら必ず押さえるべき情報です。答えられない相手からは、業務用としては買わないほうが安全です。
まとめ
食器の素材の種類は、陶器・炻器・磁器・強化磁器の4つで整理できます。分けている軸は吸水性と強度の2つだけです。
吸水する陶器は保温と質感に強く、におい・色の管理が要る。炻器はその中間で、風合いを残しながら吸水を抑えられる。磁器は硬く薄く、吸水しない。強化磁器はアルミナで強度を上げたもので、土岐市の公表値では普通の磁器の2倍以上の曲げ強度があります。
そして実務では、素材名ではなく素材が生む結果で選ぶのが確実です。CAFORAは瀬戸・美濃焼の技術と強化土で、毎日の営業に耐える器をバリスタと一緒につくっています。ラテボウル 温 -ON-・拡 -KAKU- は、業務用食洗機・電子レンジに対応しています。

