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食器のこと2026.08.08

3Dプリンターで陶器は作れる?量産の型づくりとの違いと使い分け

3Dプリンターで陶器は作れる?量産の型づくりとの違いと使い分け

「3Dプリンターで陶器が作れるらしい」という話を聞いて、自分の理想の器も作れるのだろうかと考えたことはないでしょうか。

樹脂の3Dプリンターはもう珍しくありませんが、毎日コーヒーを注ぐ器となると話は別です。熱いミルクを受けても平気なのか、口当たりはどうなのか、そもそも「プリントした器」と窯元が作る器は何が違うのか——気になるところは多いはずです。

この記事では、3Dプリンターで陶器を作るとはどういうことか、型を起こす従来の量産と何がどう違うのか、そして自分の店の器を考えるときにどちらを選ぶべきかを、製造の視点から整理します。

3Dプリンターで陶器は作れる?仕組みは「積んで、焼く」

結論から言うと、3Dプリンターで陶器は作れます。ただし「プリンターから完成品が出てくる」わけではありません。

陶器用の3Dプリンターが行うのは、あくまで成形の工程です。粘土を細く出しながら層を積み上げ、設計データどおりの立体を作る。ここまでがプリンターの仕事で、そのあとは通常の焼き物とまったく同じ道をたどります。乾燥させ、釉薬をかけ、窯で焼く。焼いて初めて陶器になります。

つまり3Dプリンターの陶器は、「デジタルで成形した焼き物」であって、樹脂やプラスチックの造形物ではありません。CAFORAの器も、成形は3D陶器プリンター、焼成は1000年の歴史を持つ瀬戸・美濃焼の技術という組み合わせで作られています。土と火の部分は、伝統的な焼き物とまったく変わらないのです。

だからこそ、業務用に必要な強度も確保できます。CAFORAでは欠けにくい強化土を使い、食洗機・電子レンジにも対応しています。「デジタルで作ったから弱い」ということはありません。

3Dプリンターと量産の違いは「型を起こすかどうか」

3Dプリンターと従来の量産の、いちばん本質的な違いは型(かた)の有無です。

陶磁器を数多く作るときは、まず石膏で型を作り、そこに泥漿(でいしょう)を流し込んで成形します。型を一度作ってしまえば、同じ形を効率よく何百個と再現できる。これが量産の強さです。一方で型そのものを起こすのに費用と時間がかかるため、少数だけ作ると1個あたりのコストが跳ね上がります。

3Dプリンターは、この型の工程を通りません。データを変えればそのまま違う形が出てくるので、1個目から作れて、直したければすぐ次を作れます。

3Dプリンター成形

型による量産

初期費用

型を起こさないため小さい

型の製作費がかかる

少数生産

得意

1個あたりが高くなりがち

大量生産

1個ずつ積むため時間がかかる

得意

形の変更

データ修正で即対応

型の作り直しが必要

試作サイクル

短い

長い

なぜオリジナルの器が長らく「数百個から」だったのか、その経済の話は 小ロットでオリジナル食器を作る方法|最低ロット30個の現実 で詳しく扱っています。

3Dプリンターでも「焼き物である」という現実は変わらない

ここが誤解されやすいところですが、成形がデジタルになっても、焼き物の性質そのものは変わりません。

まず、土は焼くと縮みます。CAFORAが製造で想定している収縮率はおよそ11%。つまり成形時の寸法のまま焼き上がるわけではなく、縮んだ先の寸法から逆算して設計する必要があります。容量や口径をミリ単位で詰めていく作業は、データの精度だけでなく、焼きを知っている人の経験があって初めて成立します。

そして、一点ずつ差が出ます。乾燥の途中でわずかに歪む、底面がかすかにくぼむ、釉薬の乗り方で色味に幅が出る——こうしたことは工業製品のようにはゼロにできません。私たちも試作の段階では、個体に番号を振って正面・側面・底面の写真と寸法・重量を記録し、どの程度ばらつくのかを実物で確認してから次の工程に進みます。

これは欠点ではなく、焼き物を選ぶということの中身です。器を検討するときは「まったく同じものが並ぶ」ではなく「同じ設計で焼かれたものが並ぶ」と捉えるほうが、実際の姿に近くなります。

3Dプリンターと量産、器の別注ではどう使い分けるか

バリスタが自分の店の器を考えるとき、この2つは対立するものではなく、段階で使い分けるものです。

  • 理想の形をまだ探している段階 … 3Dプリンターが圧倒的に向いています。作って、実際に注いで、飲んでみて、直す。型を作ってしまうとこの往復ができません。
  • 少ない数のオリジナルが欲しい段階 … 型を起こさない分、小ロットが現実的な価格に収まります。CAFORAの別注は最小ロット30個/1デザイン、納期は注文確定後およそ4週間です。
  • 同じ器を何百個も使い続ける段階 … 数がまとまるなら、型による量産のほうが1個あたりの効率で有利になります。

大切なのは、最初から大量に作らないことです。まず主力の一杯を担う器を1種類だけ形にして、店で実際に使ってみる。その結果をふまえて数を増やす——この順番なら、思っていたのと違ったときの痛手が小さくて済みます。

別注そのものを検討する前に押さえておきたい前提は、オリジナル食器を作る前に知っておきたいこと にまとめています。

CAFORAが3D陶器プリンターを使う理由

CAFORAが3D陶器プリンターを軸にしているのは、技術が新しいからではありません。バリスタの理想を確かめながら形にできるからです。

香りの立ち方、温度の残り方、ミルクとの一体感、飲み終わりの余韻。こうした体験は、図面を眺めていても答えが出ません。実際に注いで、飲んで、「もう少し口元を薄く」「もう少し浅く」と直していく必要があります。型を前提にした作り方では、この往復に費用と時間がかかりすぎて、たいてい一度で決め打ちすることになります。

そのうえで私たちは、デザインを決めたらそのまま作るのではなく、製造の実現性を1工程ずつ確認し、試作品で個体差を見てから世に出す、という手順を社内のルールにしています。速く試せることと、雑に出すことは違うからです。

よくある質問

Q. 3Dプリンターで作った陶器は、電子レンジや食洗機で使えますか CAFORAの器は強化土を使用し、食洗機・電子レンジに対応しています。成形方法ではなく、土と焼成で決まる部分です。

Q. プリントの積層跡は残りますか 成形方法や仕上げ、釉薬の掛け方によって表情は変わります。質感をどう見せたいかも含めて設計する要素だと考えてください。

Q. データさえあれば、すぐに器になりますか なりません。焼成による収縮を見込んだ設計、釉薬や焼きの条件、試作での個体差の確認が必要です。CAFORAの別注では、注文確定から約4週間をいただいています。

Q. 一点ものも作れますか 技術的には1個から成形できますが、実際の受注は最小ロット30個/1デザインからとしています。

まとめ

3Dプリンターで陶器は作れます。プリンターが担うのは成形までで、その先は乾燥・施釉・焼成という焼き物の道のりを通ります。型を起こす量産との違いは、初期費用と、形を直せる回数。少数のオリジナルや、理想を探りながら作りたい器には3Dプリンターが向いています。

一方で、焼けば縮み、一点ずつ差が出るという焼き物の性質は変わりません。そこを理解して設計できるかどうかが、器の完成度を分けます。

CAFORAは、バリスタの理想から器を設計します。3D陶器プリンターで試作を重ねて形を決めたラテボウル 温 -ON-・拡 -KAKU- は、サンプル1点から手に取れます。店のロゴ入りの本購入は30個からです。

CAFORA