萬古焼とは|土鍋と急須で知られる耐熱の器の特徴と、カフェでの選び方
家で使っている土鍋の底を見ると、「萬古焼」と書かれていることがあります。萬古焼(ばんこやき)は、名前より先に、もう手元にあることが多い産地です。
先に要点を書きます。萬古焼とは、三重県四日市市を中心につくられる半磁器です。陶器と磁器の中間の性質を持ち、最大の特徴は耐熱性にあります。国産土鍋の生産高の約80%を占め、釉薬をかけない紫泥(しでい)の急須も、この産地を代表する器です。
この記事では、三重県と萬古陶磁器卸商業協同組合の公式の記述をもとに、萬古焼の歴史と特徴を整理します。そのうえで、瀬戸と美濃で器を焼いている立場から、カフェの器として萬古焼を見るときの判断軸をお伝えします。
萬古焼とは:三重県四日市市を中心につくられる半磁器
萬古焼は国の伝統的工芸品です。三重県の公式サイトによれば、「1979年(昭和54年)1月12日から経済産業大臣指定の伝統的工芸品に指定されて」おり、正式な品目名は四日市萬古焼です。産地は四日市市、三重郡菰野町・朝日町・川越町とされています。
分類について、三重県はこう書いています。
陶器と磁器の中間的な性質を持つ半磁器に分類され、大きな特徴は耐熱性にあります。
ここは押さえておきたい点です。萬古焼は「陶器」でも「磁器」でもなく、その中間と説明されています。陶器と磁器それぞれの性格は 陶器と磁器の違い に、半磁器を含む素材の並びは 食器の素材の種類 にまとめました。
萬古焼の歴史:桑名の商人が茶器を焼いたことから
三重県の公式サイトは、始まりをこう書いています。
江戸時代中期に、桑名の商人・沼波弄山(ぬなみろうざん)が、茶の趣味が高じて、現在の朝日町に窯を築き、茶器を焼いたのが始まりとされています。
萬古陶磁器卸商業協同組合は、時期をさらに具体的に「江戸時代元文年間(1736~1740)に桑名の商人沼波弄山が茶の趣味が高じて、現在の三重郡朝日町小向に窯を築き自分で茶器を焼き始めたのが始まり」としています。
「萬古焼」という名前の由来も、この人物に由来します。
自分の作品が永遠に伝わるように願いを込め、「萬古不易(ばんこふえき)」の印を押したのが、萬古焼の名の由来です。
産地名が地名ではなく、印に押した言葉から来ているのは、日本の焼き物のなかでも珍しい成り立ちです。日本の主な産地の名前の付き方は 日本の焼き物の種類 に整理しています。
萬古焼の耐熱性:土鍋で国産の約8割
萬古焼といえば土鍋、という印象には根拠があります。萬古陶磁器卸商業協同組合は、土鍋について「生産高は国内の約80%を占めています」とし、「街中で見られる国産品土鍋のほとんどが、萬古焼と言っても過言ではないでしょう」と書いています。
耐熱性の程度についても、記述があります。
耐熱性に特に優れガスレンジや炭火などの空焚きや直火に対しても、高度の耐久性を発揮します
三重県も「直火にかけたり空焚きしたりしても十分に耐え得るもの」としています。
なぜそこまで耐えるのか、という理由も公開されています。同組合は「陶土原料に含まれるリチウム鉱石の働きによるもので、この鉱石が陶土中に40~50%含有されている」と説明しています。土そのものに、熱による膨張を抑える原料が半分近く入っている、ということです。
三重県は、あわせて「遠赤外線効果で保温性が高い」としています。熱に強いことと、冷めにくいことは別の話ですが、萬古焼はその両方が語られる産地です。器と温度の関係は コーヒーが冷めにくいカップの条件 に書きました。
紫泥急須:釉薬をかけない、萬古焼のもうひとつの顔
土鍋と並ぶ代表が、紫泥(しでい)の急須です。三重県は「鉄分を多く含む地元の赤土粘土を使用し、釉薬を使用せず焼き締めた紫泥(しでい)急須は、萬古焼のシンボルになっています」としています。
萬古陶磁器卸商業協同組合は、作り方をもう少し細かく書いています。「鉄分を含む地元の粘土を使用し還元焼成を行い、釉薬をかけない焼き締まった紫褐色」であり、「使えば使うほどに味わいと光沢を増す」。同組合は、この急須が「昭和54年に通商産業大臣指定の伝統工芸品に指定された」としています。
釉薬をかけない器は、ガラス質の膜がありません。 そのぶん土の表情が直に出て、使ううちに色が変わっていきます。逆に言えば、着色の強い飲料や茶渋が入りやすい面もあります。日本茶・ほうじ茶まわりの器の選び方は 湯呑みの種類 にまとめました。
「直火に強い」と「カフェで使える」は同じではない
私たちCAFORAは瀬戸と美濃で器を焼いています。つくる側から見ると、萬古焼の情報で一番誤解されやすいのは、耐熱性の読み替えです。
- 直火に強い=電子レンジに使える、ではありません。 加熱の仕組みが違います。表示は必ず製品ごとに確認してください(電子レンジ対応の業務用食器とは)
- 土鍋の耐熱性は、カップや皿にそのまま当てはまりません。 同じ産地でも、器種ごとに土と焼き方が違います
- 釉薬のない器は、扱いの説明を読む前提で選ぶ。 紫泥急須のように、使いながら育てることを前提にした器もあります
そして、手に持ったときの重さと口当たりは、写真では分かりません。CAFORAの器も、サンプル で実際に確かめられます。
カフェの器として萬古焼を見るときの判断軸
1. 器種ごとに仕様を確認する 「萬古焼だから直火OK」ではありません。土鍋・急須・カップは別の製品です。
2. 食洗機・電子レンジの可否は表示で見る 産地名では決まりません。業務用で毎日洗うなら、ここは最初に確認してください。
3. 釉薬の有無を確認する 釉薬のない焼き締めは、色や艶が使うほど変わります。店として、その変化を歓迎するかどうかを先に決めておくと迷いません。
4. 同じものを買い足せるか聞く 産地に窯元が多いぶん、同じ仕様が続くかは窯元によります。割れる前に確認しておくのが確実です。
よくある質問
Q. 萬古焼はどこでつくられていますか 三重県の公式サイトによれば、四日市市、三重郡菰野町、朝日町、川越町です。正式な品目名は「四日市萬古焼」で、1979年(昭和54年)1月12日から経済産業大臣指定の伝統的工芸品に指定されています。
Q. 萬古焼は陶器ですか、磁器ですか 三重県は「陶器と磁器の中間的な性質を持つ半磁器に分類され」ると説明しています。
Q. 萬古焼という名前の由来は何ですか 三重県によれば、創始者とされる桑名の商人・沼波弄山が、自分の作品が永遠に伝わるよう願いを込めて「萬古不易(ばんこふえき)」の印を押したことが名前の由来です。
Q. なぜ萬古焼の土鍋は直火に強いのですか 萬古陶磁器卸商業協同組合は、「陶土原料に含まれるリチウム鉱石の働きによるもので、この鉱石が陶土中に40~50%含有されている」と説明しています。
Q. 萬古焼の土鍋は国内でどれくらいのシェアがありますか 同組合は、土鍋の「生産高は国内の約80%を占めています」としています。
Q. 紫泥急須とは何ですか 鉄分を多く含む地元の赤土粘土を使い、釉薬をかけずに焼き締めた急須です。三重県は、これが萬古焼のシンボルになっているとしています。
まとめ
萬古焼とは、三重県四日市市を中心につくられる半磁器です。江戸時代中期(元文年間・1736〜1740年とされます)に、桑名の商人沼波弄山が茶器を焼いたのが始まりで、「萬古不易」の印が産地名の由来になっています。
最大の特徴は耐熱性。土鍋は国産の約80%を占め、その理由は陶土に40〜50%含まれるリチウム鉱石だと説明されています。もうひとつの顔が、釉薬をかけずに焼き締めた紫泥急須です。
カフェで使うときは、「直火に強い」を電子レンジ対応や食洗機対応と読み替えないこと。器種ごと・製品ごとに表示を確認するのが確実です。
CAFORAは、瀬戸と美濃の技術のうえで、バリスタの理想から器を設計しています。萬古焼の器と比べてみたくなったら、瀬戸・美濃で焼いたラテボウル、両手で包む 温 -ON- と、ラテアートを広く見せる 拡 -KAKU- もご覧ください。サンプルは1点から購入できます。

