木節粘土と蛙目粘土の違い|瀬戸の土が白いやきものを生んだ理由
焼き物の産地の話をしていると、「木節(きぶし)」「蛙目(がえろめ)」という、少し変わった名前の粘土が出てきます。どちらも瀬戸の土の代表として紹介されますが、何が違うのか、なぜ瀬戸でそれほど大事にされてきたのかは、あまり説明されません。
結論から言うと、木節粘土は「粘り」、蛙目粘土は「石英の粒」に特徴がある粘土です。そして両方に共通するのが、鉄分がほとんど含まれず、白く焼き上がること。これが、瀬戸が長く白いやきものの産地であり続けた理由のひとつです。
この記事では、辞典と産地の公的な資料をもとに2つの粘土の違いを整理し、器の素地の中で粘土が何をしているのかまで、瀬戸・美濃で器をつくる立場から書きます。
木節粘土と蛙目粘土は、どちらも瀬戸の「陶土」
日本六古窯の公式サイトによれば、瀬戸の地盤をつくる瀬戸層群からは、「木節」「蛙目」という良質な粘土が豊富に採れます。これらの粘土は耐火性が高く、可塑性(形のつくりやすさ)に富み、鉄分がほぼ含まれないため、白いやきものをつくることができる。ガラスの原料になる珪砂も一緒に採れます(出典:瀬戸焼の概要と歴史|日本六古窯 公式Webサイト)。
瀬戸で陶土の鉱山を管理する愛知県陶磁器工業協同組合は、木節粘土と蛙目粘土が採れる地層を約500万年〜250万年前のものとし、「世界でも有数の粘土」と紹介しています(出典:陶土事業|愛知県陶磁器工業協同組合)。
瀬戸だけの土ではありません。辞典では、蛙目粘土は瀬戸のほか岐阜県の土岐・多治見や三重県でも、木節粘土も瀬戸・多治見・三重県などで産するとされています。瀬戸と美濃(東濃)は、同じ土を分け合ってきた地域です。産地の成り立ちは 瀬戸焼と美濃焼の違いとは に書きました。
木節粘土と蛙目粘土の違い|見た目・粒・粘り
2つの違いを、コトバンクに収録された辞典の記述をもとに表にまとめます。
木節粘土 | 蛙目粘土 | |
|---|---|---|
読み | きぶしねんど | がえろめねんど(がいろめねんど) |
見た目 | 灰色〜暗褐色。炭化した木片を含む | 白色〜淡緑灰色。石英の粒が目立つ |
名前の由来 | 炭化した植物片の模様が、木の節に似ている | ぬれると石英の粒が、蛙の目玉のように見える |
粒 | 細かい。含まれる石英の粒も蛙目より細かい | 径1〜3mmの石英粒を40〜60%含む |
性質 | 粘着力と可塑性に富む | カオリン質の粘土に多量の石英を含む |
用途 | 陶磁器・耐火物の原料 | 陶磁器・耐火煉瓦の原料 |
出典:木節粘土|コトバンク/蛙目粘土|コトバンク(デジタル大辞泉・最新地学事典・ブリタニカ国際大百科事典・改訂新版世界大百科事典ほか)
木節粘土|炭化した木片と、強い粘り
木節粘土は、亜炭層の下にある層状の粘土です。灰色から暗褐色で、中に炭化した木片を含みます。岐阜県現代陶芸美術館の解説では、この黒い木片は、木が長い時間土の中に埋もれて酸素や水分が抜けきり「炭化」したものだと説明されています。
最大の特徴は粘りです。辞典には「脂肪光沢があり、粘着力、可塑性に富む」とあります。粒子が細かいため、形をつくりやすく、つくった形を保ちやすい。色の違いによって、黒木節・白木節などと呼び分けられます。
蛙目粘土|石英の粒と、白い焼き上がり
蛙目粘土は、カオリン質の粘土の中に、多量の石英の粒を含む粘土です。最新地学事典によれば、径1〜3mmの石英粒が40〜60%を占めます。雨などでぬれると、この石英の粒が蛙の目玉のように見える——それが名前の由来です。岐阜県現代陶芸美術館の解説では、光が当たると粒がきらりと光る様子をカエルの目にたとえた、とも説明されています。
どちらも花崗岩から生まれた粘土
2つの粘土は性格が違いますが、生まれは同じです。どちらも、花崗岩が風化してできた粘土です。
- 蛙目粘土は、花崗岩類が風化分解され、ほとんど淘汰されずに堆積して粘土になったもの(最新地学事典)。流される途中でふるい分けられていないので、粗い石英の粒がそのまま残っています
- 木節粘土は、風化してできた粘土が流水で運ばれ、湖や沼の底に堆積したもの(改訂新版世界大百科事典)。運ばれる間に細かい粒が選ばれ、植物の破片と一緒に沈んだため、粒が細かく、炭化した木片を含みます
同じ花崗岩から、運ばれ方の違いで、粗い粒の蛙目と、細かく粘る木節ができた。こう考えると、2つの違いがすっきり理解できます。
器の素地の中で、粘土は何をしているか
器の素地は、粘土だけでできているわけではありません。土岐市の解説では、焼き物の素地は粘土・珪石・長石の3つを主な原料とし、それぞれに役割があります。
原料 | 役割 |
|---|---|
粘土 | 形をつくって保つ。最低でも30%は必要 |
珪石 | ガラスの材料になる |
長石 | ガラスを熔かす材料になる |
配合の目安として、磁器は粘土30%・珪石40%・長石30%、陶器は粘土50%・珪石30%・長石20%程度とされています(出典:焼き物の素地に長石を入れる理由|土岐市公式ウェブサイト)。陶器と磁器の違いそのものは 陶器と磁器の違い に、素材の分類は 食器の素材の種類 にまとめています。
この表で見ると、粘りに優れた木節は「形をつくる粘土」として、石英を多く含む蛙目は「粘土でありながら珪石も抱えた土」として、素地の中で働けることが分かります。実際、瀬戸染付工芸館の解説では、瀬戸染付の素地は、風化した花崗岩である砂婆(さば)に木節粘土や蛙目粘土を混ぜた、柔らかな素地だとされています。
もうひとつ、器をつくる側として知っておいてほしいのが、粘土は焼くと縮むということです。有田観光協会の解説では、有田焼は成形直後から完成までに約15%縮みます。私たちがラテボウルの量産前に試作の個体差を確かめたときも、収縮率を約11%と見込んで形を設計していました。どれだけ縮むかは素地の配合で変わるので、同じ図面でも土が変われば仕上がりの大きさが変わります。
器の厚みや口当たりは、素地と焼き方で決まる部分が大きく、写真では伝わりません。CAFORAの器の実物は サンプル で確かめられます。
瀬戸の土が、器づくりで評価されてきた理由
瀬戸は12世紀の終わりに古瀬戸の生産が始まり、当時、国内でただひとつの施釉陶器の生産地でした(日本六古窯 公式サイト)。その背景にあったのが、ここまで見てきた土です。
- 鉄分がほぼ含まれないので、白く焼き上がる。釉薬や絵付けの色が素直に出る
- 耐火性が高いので、高い温度でもしっかり焼き締められる
- 可塑性に富むので、形がつくりやすい
瀬戸で陶土・窯業原料を扱う丸北窯業は、瀬戸の土を「作陶しやすい」「使用温度範囲が広い」「焼成しやすい」と説明しています(出典:瀬戸土とは|丸北窯業)。
CAFORAは、瀬戸・美濃焼の1000年の技術のうえで、強化土を使い、チップに強く食洗機・電子レンジに対応する器をつくっています。産地の土と技術を、自分の店のための器にどう生かすか。別注の進め方は オリジナル食器を作る前に知っておきたいこと にまとめています。
よくある質問
Q. 蛙目粘土の読み方は「がえろめ」ですか「がいろめ」ですか どちらの読み方も使われます。辞典には「がえろめねんど」「がいろめねんど」の両方が載っています。
Q. 木節粘土と蛙目粘土は、瀬戸でしか採れないのですか いいえ。辞典では、岐阜県の多治見・土岐周辺や三重県などでも産するとされています。瀬戸と東濃は、同じ土の地層を持つ地域です。
Q. 黒木節と白木節は何が違うのですか 色調による呼び分けです。木節粘土は炭化した植物などの有機物を含むため、その量や状態によって色が変わり、黒木節・白木節などと呼ばれます。
Q. なぜ瀬戸の土は白く焼けるのですか 日本六古窯の公式サイトによれば、瀬戸の木節・蛙目は鉄分がほぼ含まれないためです。鉄分の多い土は、焼くと茶色や赤みを帯びます。
まとめ
木節粘土と蛙目粘土は、どちらも瀬戸や東濃で採れる、花崗岩由来の良質な粘土です。木節は細かい粒と強い粘り、蛙目は多量の石英の粒に特徴があり、違いは運ばれ方の違いから生まれました。
そして両方に共通するのが、鉄分が少なく白く焼き上がること。形をつくりやすく、高い温度に耐え、色が素直に出る土が、瀬戸を長く白いやきものの産地にしてきました。
瀬戸・美濃で焼いたCAFORAのラテボウル 温 -ON-・拡 -KAKU- の手ざわりは、サンプル1点から確かめられます。

