天目茶碗とは|美濃の窯で焼かれた黒い茶碗と、カフェの器での生かし方
美術館で「曜変天目」の行列を見たことがあるかもしれません。国宝にも指定されている、黒い釉薬の茶碗です。ただ、そもそも「天目」が何を指す言葉なのかは、意外と説明されないまま使われています。産地の名前なのか、形の名前なのか、釉薬の名前なのか。
結論から言うと、天目は中国の山の名前から来た呼び名で、いまは黒い釉薬をかけた一群の茶碗を指します。そして日本では、瀬戸・美濃でも早くから焼かれてきました。美濃焼が国の伝統的工芸品として指定されている15の様式の中にも、「天目」は入っています。
この記事では、文化庁の文化遺産オンラインと美濃焼伝統工芸品協同組合、土岐市が公開している資料をもとに天目茶碗の輪郭を整理し、そのうえで、黒い器をカフェで使うときの見方を、瀬戸・美濃で器をつくる立場から書きます。
天目茶碗とは|名前は中国の天目山から来ている
天目という呼び名は、産地でも形でもなく、中国の山の名前が由来です。
文化遺産オンラインの解説では、天目とは、中国浙江省と安徽省の境にある天目山から付けられた名前だとされています。美濃焼伝統工芸品協同組合の解説でも、天目山の仏寺で使われていた茶碗を、鎌倉時代に中国を往来した禅僧が持ち帰ったからという説が挙げられています(同組合は「という説」と書いており、複数の説があることも併記しています)。
つまり、もとは中国から渡ってきた茶碗の呼び名でした。その様式が日本で写され、産地ごとに焼かれるようになった、という順番です。ここが「瀬戸焼」「美濃焼」のような産地名の器とは成り立ちが違うところです。産地から器を見る話は 瀬戸焼と美濃焼の違いとは にまとめています。
天目茶碗の特徴|黒い釉薬・すり鉢のような形・鼈口
天目茶碗の見た目には、はっきりした共通点があります。
文化遺産オンラインは、黒い釉薬、すり鉢のような形、茶碗の縁を内側に一度絞ってわずかに外に反る鼈口が一般的な天目茶碗の特徴だと説明しています。美濃焼伝統工芸品協同組合の解説も、一般に天目茶碗の形は、口が開き高台の締まったものが常であるとしています。
要素 | 特徴 |
|---|---|
釉薬 | 黒。鉄およびマンガンなどによって黒・褐色を呈する |
形 | すり鉢のような形。口が開き、高台は締まっている |
口元 | 縁を内側に一度絞り、わずかに外へ反る「鼈口」 |
出典:禾目天目|文化遺産オンライン(文化庁)/天目|美濃焼伝統工芸品協同組合
注目したいのは、黒が鉄からできているという点です。釉薬に含まれる鉄やマンガンが、焼かれて黒や褐色になります。同じ鉄でも量と焼き方で色が変わるのがやきものの面白いところで、釉薬そのものの話は 食器の釉薬とは に書きました。
曜変・油滴・禾目|天目茶碗の種類の違い
「天目」とひとくくりにされますが、中身は細かく分かれています。美濃焼伝統工芸品協同組合の解説では、種類として油滴・曜変・木の葉・禾目・玳皮などが挙げられています。
- 禾目天目|黒地に茶褐色の細い線が無数に流れる。これを稲穂の先にある毛(禾=のぎ)に見立てた名前です。中国では兎毫盞と呼ばれます
- 油滴天目|油の滴のような斑点が浮かぶもの
- 曜変天目|国宝として知られる、光の加減で色が変わって見えるもの
いずれも、黒い釉薬の表面に現れた模様の違いで呼び分けられています。つまり天目の見どころは、形よりも「黒の中に何が出ているか」にあります。
この「黒の表情」は、写真ではほとんど伝わりません。光の角度で見え方が変わるものほどそうです。器の実物でしか分からない部分があるのは、現代の器も同じで、CAFORAの器も サンプル で実際の手ざわりを確かめられるようにしています。
美濃でも天目茶碗は焼かれていた|元屋敷東1号窯
天目は中国由来の様式ですが、日本の窯でも焼かれてきました。美濃はその一つです。
土岐市にある国指定史跡「元屋敷陶器窯跡」には、形式の違う窯の跡が残っています。そのうち元屋敷東1号窯は16世紀後半に元屋敷で最初に築かれた大窯で、天目茶碗、灰釉皿、すり鉢などが生産されました(出典:元屋敷陶器窯跡|土岐市公式ウェブサイト)。
窯 | 形式 | 主な製品 |
|---|---|---|
元屋敷東1号窯 | 大窯(16世紀後半・最初に築かれた) | 天目茶碗・灰釉皿・すり鉢 |
元屋敷東2号窯 | 大窯 | 瀬戸黒・黄瀬戸・灰志野 |
元屋敷東3号窯 | 大窯 | 志野の量産・沓茶碗 |
元屋敷窯 | 連房式登窯(焼成室14房) | 黒織部・青織部・志野織部 |
この並びは、美濃のやきものの流れをよく表しています。天目茶碗を焼いていた窯の次に、瀬戸黒・黄瀬戸・志野が登場し、そのあと織部が花開いた。桃山の華やかな様式の手前に、黒い天目の時代があったわけです。織部・志野・黄瀬戸の違いは 織部焼・志野焼・黄瀬戸の違い に整理しました。
美濃焼が国の伝統的工芸品として指定されている15の様式に「天目」が含まれているのも、この歴史の延長にあります。美濃焼全体の成り立ちは 美濃焼とは にまとめています。
カフェの器に、黒い天目をどう生かすか
ここからは、器をつくる側としての話です。
まず正直に書くと、天目茶碗そのものは茶道具の世界です。抹茶を点てるための形なので、そのままカフェの器として置き換わるものではありません。カフェで生かすなら、様式を持ち込むのではなく、黒という色の性質を借りるという形になります。
黒い器には、はっきりした得意・不得意があります。
- 得意:白を際立たせる|ミルクの白、フォームの白は、黒い器の上でいちばん強く見えます。ラテアートのコントラストは黒地で最大になります
- 得意:色の褪せが目立たない|明るい色の器に比べ、使い込んだときの印象が変わりにくい
- 不得意:液面の位置が読みにくい|内側が黒いと、注ぐ量の基準が見えづらくなります。オペレーションで量を揃えたい店では、内側だけ明るい釉薬にするという選択もあります
- 不得意:水滴や粉が目立つ|洗い上がりの水跡、抹茶やココアの粉が白く残って見えます。拭き上げの手間は増えます
そして業務用として見るなら、もう一つ。鉄を含む釉薬は、焼き方で色が動きます。同じ釉薬でも酸化と還元で発色が変わるため、色の揺らぎが魅力である反面、追加発注したときに前と同じ色が揃いにくいという面があります。割れた1客を買い足すところまで考えて選ぶのが、毎日使う器の見方です。
CAFORAは、瀬戸・美濃焼の1000年の技術のうえで強化土を使い、チップに強く食洗機・電子レンジに対応する器をつくっています。黒い器が自分の店の一杯に合うかどうかは、実物で見るのがいちばん確実です。
よくある質問
Q. 天目は産地の名前ですか いいえ。中国浙江省と安徽省の境にある天目山から付けられた名前だとされています。産地名ではなく、黒い釉薬をかけた一群の茶碗の呼び名です。
Q. 天目茶碗は中国のものですか、日本のものですか もとは中国から渡ってきた様式です。そのうえで日本の窯でも焼かれてきました。美濃の元屋敷東1号窯は、16世紀後半に天目茶碗を生産しています。
Q. 曜変天目と禾目天目は何が違うのですか どちらも黒い釉薬の表面に現れる模様の違いによる呼び分けです。禾目天目は、黒地に茶褐色の細い線が無数に流れているのを、稲穂の先にある毛に見立てた名前です。
Q. カフェで黒い器を使うときの注意点は 内側が黒いと注ぐ量の基準が見えにくくなること、水跡や粉が目立つことの2点です。そのうえで、追加発注で色が揃うかを発注前に確認してください。
まとめ
天目茶碗の「天目」は、中国浙江省と安徽省の境にある天目山から付けられた名前です。黒い釉薬、すり鉢のような形、縁を一度絞ってわずかに反る鼈口が一般的な特徴で、曜変・油滴・禾目などの種類に分かれます。
日本でも早くから焼かれ、美濃では16世紀後半の元屋敷東1号窯が天目茶碗を生産していました。瀬戸黒や志野、織部といった桃山の様式の、ひとつ手前の時代です。
カフェで黒い器を選ぶなら、白を際立たせる強さと、液面が読みにくい・水跡が目立つという弱点を両方見たうえで決めてください。美濃の様式全体は 美濃焼とは に、瀬戸・美濃で焼いたCAFORAのラテボウルは 商品一覧 にまとめています。

