美濃焼とは|特徴と歴史、15の伝統様式とカフェの器の選び方
美濃焼(みのやき)は、日本でいちばん身近な焼き物のひとつです。毎日使っている茶碗やマグカップの裏を見ると、「美濃焼」と入っていることは珍しくありません。それなのに、「美濃焼らしさとは何か」を一言で説明できる人は多くありません。
それには理由があります。美濃焼の最大の特徴は、1つの様式を持たないことだからです。緑の織部も、白い志野も、真っ白な日常の食器も、すべて美濃焼です。
この記事では、美濃焼とは何かを、産地・特徴・歴史・15の伝統様式の順に整理し、カフェの器として美濃焼を選ぶときに何を見ればいいかを書きます。私たちCAFORAも、瀬戸・美濃で器を焼いています。
美濃焼とは|岐阜県東濃地方でつくられる焼き物
美濃焼は、岐阜県の東濃地方でつくられている焼き物です(美濃焼伝統工芸品協同組合)。辞典では、産地を多治見市・土岐市・瑞浪市・可児市など東濃西部一帯としています(改訂新版 世界大百科事典)。
規模の大きさも特徴です。岐阜県産業経済振興センターの調査レポートによれば、2019年の工業統計調査で、陶磁器製の和飲食器の出荷額は岐阜県(美濃)が全国の42.2%を占め、1位でした(2位は佐賀の18.6%、3位は長崎の17.9%)。美濃焼伝統工芸品協同組合も、美濃焼が全国の陶磁器生産の50%以上を占めると紹介しています。私たちが「どこかで見たことがある器」の多くが、実は美濃焼だということです。
出典:美濃焼|美濃焼伝統工芸品協同組合/陶磁器産業|岐阜県産業経済振興センター/美濃焼|コトバンク
美濃焼の特徴は「1つの様式を持たない」こと
有田焼の白磁、備前焼の焼き締めのように、産地の名前を聞くと特定の見た目が浮かぶ焼き物があります。美濃焼はそうではありません。美濃焼伝統工芸品協同組合は、美濃焼の特徴を「1つの様式を持たない」多様さだとしています。
その多様さを表しているのが、伝統的工芸品として指定されている15の様式です。
志野・織部・黄瀬戸・瀬戸黒(引出黒)・灰釉・染付・天目・赤絵・青磁・鉄釉・粉引・飴釉・御深井・美濃伊賀・美濃唐津
白・緑・黄・黒、釉薬の違い、絵付けの違い——同じ産地の中に、これだけ違う器づくりが並んでいます。主なものを、公的な資料で確かめられる範囲でまとめます。
様式 | どんな器か | 詳しく |
|---|---|---|
志野 | 長石を主体とした釉のやわらかな白。柚子肌と緋色(岐阜県) | |
織部 | 酸化銅を使った緑の釉。ひずんだ形と奇抜な装飾(多治見市) | 同上 |
黄瀬戸 | 灰釉が主体。黄金色から黄緑色に発色する(岐阜県) | 同上 |
灰釉・鉄釉・青磁 | 灰や鉄を含む釉。鉄を含む釉は焼き方で黄にも青にもなる(土岐市) | |
染付・赤絵 | 呉須で描く下絵付けと、本焼き後に描く上絵付け |
釉薬そのものの基本は 食器の釉薬とは にまとめています。瀬戸黒・天目・粉引・飴釉・御深井・美濃伊賀・美濃唐津は、この連載で順に取り上げていきます。
美濃焼の歴史|須恵器から桃山の茶陶、日常の器へ
美濃焼の歴史は、美濃焼伝統工芸品協同組合によれば千有余年に及びます。流れを表にまとめます。
時代 | 美濃で焼かれたもの |
|---|---|
7世紀〜 | 須恵器(美濃焼の源流) |
平安時代 | 灰釉や緑釉をかけた器 |
鎌倉・室町時代 | 山茶碗、古瀬戸系の施釉陶器、灰釉・鉄釉 |
室町時代後期(1500年頃) | 大窯が築かれ、灰釉・鉄釉の製品を生産 |
桃山時代 | 茶陶の需要から、黄瀬戸・志野・織部・瀬戸黒が誕生 |
江戸時代 | 日常の食器を大量に生産。幕末に磁器の焼成が始まる |
明治以降 | 輸出用の上絵磁器を軸に、生産が急速に伸びる |
出典:美濃焼伝統工芸品協同組合、コトバンク(改訂新版 世界大百科事典)
辞典では、狭い意味での「美濃焼」を、室町末から桃山時代以降の瀬戸黒・黄瀬戸・志野・織部を指すものとしています。いまの美濃焼のイメージの中心にある桃山の茶陶と、毎日の食器を大量に支えてきた日常の器——この両方の顔を持っていることが、美濃焼の強さです。
美濃焼と、県境を挟んで隣り合う瀬戸焼との違いは 瀬戸焼と美濃焼の違いとは に書きました。美濃の土台になっている粘土の話は 木節粘土と蛙目粘土の違い にあります。
美濃焼の器は電子レンジ・食洗機に使える?
「美濃焼は電子レンジに使えるか」「食洗機に入れていいか」はよく聞かれる質問です。答えは、「美濃焼だから使える・使えない」ということはありません。美濃焼は様式を1つに決めない産地の名前なので、使えるかどうかは器ごとに違います。
見るべきは、次の2点です。
- 製品の表示|電子レンジ・食洗機の対応表示があるか。業務で毎日回すなら、表示のあるものを選んでください
- 金・銀の装飾|金や銀の上絵がある器は、電子レンジでスパークし、絵付けがはげる原因になります(鳴海製陶の取扱い説明より)
素材ごとの吸水性や強さの違いは 食器の素材の種類 に、食洗機で欠けにくい器の見分け方は 食洗機で欠けにくい業務用食器の選び方 にまとめています。
カフェの器として美濃焼を選ぶときの見方
様式が多いということは、店の世界観に合わせて選べる幅が広いということです。選ぶときは、次の順で考えると迷いません。
- 色と質感で様式を選ぶ|やわらかな白なら志野、抹茶や焙じ茶の一杯には織部の緑、揺らぎのある黄なら黄瀬戸。様式の名前は、器の色と質感の「言葉」として使えます
- 業務用として設計されているかを見る|同じ美濃焼でも、家庭用と業務用では耐久の設計が違います
- 焼き方を確認する|同じ釉薬でも、焼き方で色が変わります。私たちも量産を窯元と詰めたとき、同じ白い釉薬でも酸化で焼くとやや黄寄り、還元で焼くとやや青寄りになる前提で色味を決めました
- 追加発注できるかを確かめる|割れた1客を半年後に買い足したとき、同じ色で届くか。産地の窯を選ぶ意味はここにあります
美濃の色と質感が、自分の店の一杯にどう合うかは、写真ではほとんど伝わりません。瀬戸・美濃で焼いたCAFORAの器は サンプル で実物を確かめられます。
既製品で合うものが見つからなければ、器そのものを作る選択肢もあります。美濃は成形・釉薬・焼成の担い手が集まった産地なので、別注の相談がしやすい土地です。進め方は オリジナル食器を作る前に知っておきたいこと にまとめています。
美濃焼の様式と技法を詳しく知る
美濃焼の様式や技法は、それぞれ個別の記事で詳しく書いています。
- 瀬戸黒とは|引出黒とも呼ばれる黒い茶碗と、桃山の美濃で生まれた焼き方
- 美濃伊賀とは|伊賀焼を写した美濃の器の特徴と、伊賀焼との見分け方
- 美濃唐津とは|唐津を写した美濃の器の特徴と、元屋敷窯とのつながり
- 天目茶碗とは|美濃の窯で焼かれた黒い茶碗と、カフェの器での生かし方
- 灰釉とは|草木の灰から生まれた釉薬と、焼き方で色が変わる理由
- 粉引とは|白い化粧土をかけた器の特徴と、カフェで使うときの注意点
- 御深井とは|淡い緑に発色する灰釉と、名古屋城で焼かれた器の歴史
- 窯変とは|窯の中で生まれる色の変化と、器の個体差の読み方
- 登り窯と穴窯の違い|窯の形で変わる焼き上がりと美濃の窯の歴史
よくある質問
Q. 美濃焼は陶器ですか、磁器ですか 両方あります。美濃では長く陶器が焼かれ、幕末から磁器の焼成も始まりました。いまも陶器・磁器の両方がつくられています。
Q. 美濃焼の読み方は? 「みのやき」です。美濃は、いまの岐阜県南部にあたる旧国名です。
Q. 美濃焼の伝統的工芸品の15種類とは何ですか 志野・織部・黄瀬戸・瀬戸黒(引出黒)・灰釉・染付・天目・赤絵・青磁・鉄釉・粉引・飴釉・御深井・美濃伊賀・美濃唐津の15です(美濃焼伝統工芸品協同組合)。
Q. 美濃焼と瀬戸焼はどう違いますか 県境を挟んで隣り合う、どちらも幅の広い総合産地です。違いは 瀬戸焼と美濃焼の違いとは に詳しく書いています。
まとめ
美濃焼とは、岐阜県東濃地方でつくられる焼き物です。陶磁器製の和食器の出荷額で全国の4割以上を占める規模を持ちながら、1つの様式を持たないのが最大の特徴。志野・織部・黄瀬戸をはじめとする15の伝統様式と、毎日の食器を大量に支えてきた力の両方が、美濃焼の顔です。
カフェの器として選ぶなら、様式の名前を色と質感の言葉として使い、そのうえで業務用の設計・焼き方・追加発注のしやすさを確かめてください。
CAFORAは、瀬戸・美濃焼の技術と強化土で、バリスタの理想から器を設計しています。この産地で焼いているラテボウルが、両手で包む 温 -ON- と、ラテアートを広く見せる 拡 -KAKU- です。サンプルは1点から、店のロゴ入りの本購入は30個から承っています。

