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食器のこと2026.09.24

美濃伊賀とは|伊賀焼を写した美濃の器の特徴と、伊賀焼との見分け方

美濃伊賀とは|伊賀焼を写した美濃の器の特徴と、伊賀焼との見分け方

「美濃伊賀」という名前は、地名が二つ並んでいます。美濃は岐阜、伊賀は三重。別々の産地の名前が一つの器につながっているところに、この器の成り立ちが全部入っています。

先に要点を書きます。美濃伊賀とは、伊賀焼の器形や技法を写して、美濃で焼かれた陶器です。美濃焼の伝統的工芸品15品目のひとつで、「伊賀織部」とも呼ばれます。そして見分け方の核心はひとつ——伊賀焼の表情は窯のなかで自然にできるもの、美濃伊賀の表情は人が掛けてつくるものです。

この記事では、美濃焼伝統工芸品協同組合と伝統的工芸品産業振興協会の記述をもとに、美濃伊賀とは何かと、伊賀焼との違いを整理します。瀬戸と美濃で器を焼いている立場から、カフェの器として見るときの判断軸もお伝えします。

美濃伊賀とは:伊賀を写したことが、そのまま名前になった器

美濃焼伝統工芸品協同組合は、美濃伊賀をこう説明しています。

花入や、水指等でみられるような伊賀風の形をしたやきもののことをいう。器形や技法が伊賀を真似ていることからつけられた名前で、伊賀では自然釉が作り出したビードロ(自然釉が溶けてたまり、緑色に発色している)が魅力なのに対し、白泥で化粧掛けをした上に鉄釉を流しかけているのが特徴。伊賀織部ともいう。

短い説明のなかに、名前の由来・器形・見分け方がすべて入っています。

背景について、多治見市美濃焼ミュージアムは次のように書いています。

桃山時代、美濃の陶工たちは志野や織部などとならび人気のあった、伊賀焼を模倣した茶陶を焼きました

桃山時代の美濃は、流行しているものを次々に焼いていた産地でした。志野・織部・黄瀬戸といった独自の様式と並行して、よそで人気のある器も自分たちの土と釉薬で再現していた、ということです。美濃の様式全体の成り立ちは 美濃焼とは に、代表的な三つの様式は 織部焼・志野焼・黄瀬戸の違い にまとめました。

美濃焼伝統工芸品協同組合は、経済産業大臣の指定を受けた美濃焼の15品目として、志野、織部、黄瀬戸、瀬戸黒・引出黒、灰釉、染付、天目、赤絵、青磁、鉄釉、粉引、飴釉、御深井、美濃伊賀、美濃唐津を挙げています。美濃伊賀と美濃唐津の2つだけ、よその産地の名前が付いているのが分かります。

伊賀焼とは:窯のなかで自然にできる「ビードロ」

比べる相手を先に押さえます。伝統的工芸品産業振興協会は、伊賀焼の特徴をこう書いています。

すぐ隣の信楽焼と比べて硬く、また、やや重みがあります。(中略)この窯変によるビードロというガラス質や焦げの付き具合、そして器そのものの力強い形や色が、伊賀焼の特徴となっています

そしてビードロの成り立ちを、次のように説明しています。

降りかかった薪の灰が高温の炎の中で溶かされ、また陶土から自然に溶け出し、ガラスのような天釉「ビードロ」となります

釉薬を掛けていません。 薪の灰と土そのものが、窯のなかで溶けてガラスになる。これが伊賀焼の緑色の正体です。窯のなかで起こる変化については 窯変とは に、隣の産地については 信楽焼とは にまとめています。

伊賀焼の指定年月日は昭和57年11月1日、主要製造地域は三重県の伊賀市、名張市です。同協会は歴史を「始まりは7世紀後半から8世紀に遡ります」とし、安土桃山時代に伊賀上野の藩主が茶や陶芸に精通していたことから、茶の湯の陶器として全国に名が広まったとしています。

見分け方:自然にできたのか、人が掛けたのか

ここが本題です。両者を分けるのは、表情のつくられ方です。

伊賀焼

美濃伊賀

産地

三重県伊賀市・名張市

岐阜県(美濃)

表情のもと

薪の灰と陶土が溶けた自然釉(ビードロ)

白泥の化粧掛け+鉄釉の流しかけ

つくられ方

窯のなかで起こる(窯変)

人が掛ける(施釉)

別名

古伊賀・遠州伊賀

伊賀織部

伊賀焼は「起きたこと」、美濃伊賀は「やったこと」と言い換えられます。緑や流れの表情が似ていても、成り立ちが逆向きです。

美濃伊賀が白い泥を先に掛けるのは、下の土の色を隠して発色を整えるためです。白化粧という考え方そのものは 粉引とは に、その上に掛ける釉薬の役割は 食器の釉薬とは にまとめました。

重さも口当たりも、写真では分かりません。 CAFORAの器も、サンプル で実際に手に取って確かめられます。

一度途絶え、研究の末に戻された技術

美濃伊賀は、桃山から今日まで途切れずに続いてきたわけではありません。多治見市美濃焼ミュージアムは、所蔵する美濃伊賀花入(加藤十右衛門 作・20世紀)についてこう記しています。

土の調合や釉薬を工夫しなければなりませんが、十右衛門は研究の末、途絶えていた美濃伊賀の技術を復活させました

一度失われ、あとから研究で取り戻された技術だということです。同館は、この花入について「意識的に流した釉薬が、変化に富んだ伊賀焼らしさを表しています」とも書いています。

「意識的に流した」という表現は重要です。偶然の産物に見える表情を、狙って出している。ここに、美濃という産地の性格がはっきり出ています。窯の形と焼き上がりの関係は 登り窯と穴窯の違い にまとめました。

私たちCAFORAも美濃と瀬戸で器を焼いていますが、「狙った通りに出す」ことに手間をかけるという点は、いまの量産の現場とまったく同じです。同じ色を同じように出し続けられるかどうかは、追加発注のたびに問われます。

カフェの器として美濃伊賀を見るときの判断軸

1. 茶陶の器形がもとになっていることを踏まえる 美濃焼伝統工芸品協同組合が挙げているのは花入や水指です。もともと飲食用の器種ではありません。カフェで使うなら、飲食器として作られた製品かどうかを先に確認してください。

2. 流しかけの表情は一枚ずつ違う 釉薬を流しかける以上、流れ方は揃いません。揃った見た目を保ちたい店では、そこを先に確認しておくと安心です。

3. 食洗機・電子レンジの可否は製品ごとに見る 様式の名前では決まりません。毎日洗う業務用なら、最優先の確認項目です。

4. 追加発注できるかを最初に聞く 作家ものが多い領域です。同じ土・同じ釉薬で買い足せるかを、最初に確認しておいてください。

よくある質問

Q. 美濃伊賀とは何ですか 美濃焼伝統工芸品協同組合は「花入や、水指等でみられるような伊賀風の形をしたやきもののこと」とし、「器形や技法が伊賀を真似ていることからつけられた名前」と説明しています。

Q. 美濃伊賀と伊賀焼はどう見分けますか 表情のつくられ方が違います。同組合によれば、伊賀は「自然釉が作り出したビードロ」が魅力なのに対し、美濃伊賀は「白泥で化粧掛けをした上に鉄釉を流しかけているのが特徴」です。

Q. ビードロとは何ですか 伝統的工芸品産業振興協会は「降りかかった薪の灰が高温の炎の中で溶かされ、また陶土から自然に溶け出し、ガラスのような天釉」と説明しています。掛けた釉薬ではありません。

Q. 美濃伊賀は「伊賀織部」とも呼ばれますか はい。美濃焼伝統工芸品協同組合が「伊賀織部ともいう」と記しています。

Q. 美濃伊賀は美濃焼の伝統的工芸品ですか はい。同組合は、経済産業大臣の指定を受けた15品目のひとつとして美濃伊賀を挙げています。

Q. 美濃伊賀はカフェの業務用に使えますか 飲食器として作られた製品であれば使えます。ただし、もとは花入や水指の様式で、流しかけによる個体差も出ます。用途・扱いの条件・追加発注の可否を、製品ごとに確認してください。

まとめ

美濃伊賀とは、伊賀焼の器形や技法を写して美濃で焼かれた陶器です。美濃焼の伝統的工芸品15品目のひとつで、「伊賀織部」とも呼ばれます。

見分け方は表情の成り立ちで決まります。伊賀焼のビードロは薪の灰と陶土が窯のなかで溶けた自然釉、美濃伊賀は白泥の化粧掛けの上に鉄釉を流しかけたもの。似ているのは形と雰囲気であって、つくり方は逆向きです。

そしてこの器は、一度途絶えたあと研究によって取り戻されました。偶然に見える表情を狙って出す——美濃という産地の性格が、名前の付き方からも技法からも読み取れます。

CAFORAは、瀬戸と美濃の技術のうえで、バリスタの理想から器を設計しています。同じ瀬戸・美濃の産地で焼いたラテボウル、両手で包む 温 -ON- と、ラテアートを広く見せる 拡 -KAKU- は、サンプル1点から手に取って確かめられます。

CAFORA