粉引とは|白い化粧土をかけた器の特徴と、カフェで使うときの注意点
やわらかい白の器を探していると、「粉引(こひき)」という名前によく出会います。真っ白な磁器とは違う、少し温かみのある白。カフェの器としても人気のある表情です。
ただ、この白には仕掛けがあります。粉引の白は、土の色でも釉薬の色でもありません。 暗い色の土の上に、白い土を一枚かぶせてつくった白です。この構造を知っておくと、粉引の魅力も、業務で使うときに気をつけるべき点も、どちらも理由から理解できます。
この記事では、美濃焼伝統工芸品協同組合や辞典の解説をもとに粉引とは何かを整理し、瀬戸・美濃で器をつくる立場から、カフェで粉引の器を使うときの見方を書きます。
粉引とは|鉄分の多い素地に白い化粧土をかけた器
美濃焼伝統工芸品協同組合は、粉引を次のように説明しています。
鉄分の多い土質の素地の上に白い化粧土を覆い、さらに透明釉を掛けたものをいう。白い粉を引いたようなことから名づけられた。粉吹ともいい、高麗茶碗はこの一種である。
この短い説明に、粉引の構造がすべて入っています。下から順に並べると、次の3層です。
層 | 中身 | 役割 |
|---|---|---|
いちばん下 | 鉄分の多い土の素地 | 器の形と強さをつくる。色は暗め |
まん中 | 白い化粧土 | 器の白を出す |
いちばん上 | 透明釉 | 表面をガラスで覆う。下の白を見せる |
「化粧土」とは、素地の表面にかける、素地とは別の色の土のことです。粉引では、この化粧土が白の担い手です。上に掛かっている透明釉は色を持たないので、見えている白は、ガラス越しに見ている化粧土の白ということになります。
名前の由来は、白い粉を引いたように見えることから。別名の「粉吹(こふき)」も同じ見た目から来ています。粉引は美濃焼の伝統的工芸品15品目のひとつにも数えられています(出典:伝統工芸品「美濃焼」|美濃焼伝統工芸品協同組合)。
粉引の歴史|朝鮮半島で生まれ、桃山の茶人が注目した
粉引のルーツは朝鮮半島にあります。
日本大百科全書(ニッポニカ)によれば、粉引は朝鮮半島で李朝前期に焼かれた陶器の一種で、刷毛を使わずに、器体に厚く白化粧を全面に施し、透明釉をかけたものです。そして桃山時代には日本の茶人の注目するところとなりました。精選版 日本国語大辞典も、粉引を朝鮮の李朝の陶器として説明し、白い釉が粉を引いたようになっているのでこの名がある、としています。
出典:粉引|コトバンク
美濃焼伝統工芸品協同組合が「高麗茶碗はこの一種である」と書いているのも、この流れです。朝鮮半島から渡ってきた茶碗が茶の湯の世界で好まれ、日本の産地でもその白が受け継がれてきました。
同じ桃山時代の美濃では、志野のやわらかな白や、瀬戸黒の黒一色の茶碗も生まれています。美濃焼全体の成り立ちと15の様式は 美濃焼とは にまとめています。
粉引と刷毛目の違い|白化粧の「かけ方」で名前が変わる
白い化粧土で器を白く見せる技法は、粉引だけではありません。世界大百科事典では、朝鮮半島の白い土で化粧する陶器について、彫三島・刷毛目・彫刷毛目・絵刷毛目・粉引などに分類されていると説明されています。
違いを分けているのは、白化粧をどうかけるかです。
- 粉引|刷毛を使わず、器全体に厚く白化粧をかける(ニッポニカ)。器全体がやわらかな白になる
- 刷毛目|名前のとおり、刷毛で白化粧を塗った跡が器の表情になる
辞典がわざわざ「刷毛を使わずに」と書いているのは、同じ仲間に刷毛で塗る技法があるからです。全面を白で包むのが粉引、刷毛の跡を見せるのが刷毛目、と覚えておくと区別しやすいでしょう。白が「面」なのか「線」なのか、という違いです。
化粧土の白は、色を分けるときにも使われる
ここからは、器をつくる側の話です。
粉引の「化粧土で色を出し、上から透明釉を掛ける」という構造は、昔の茶碗だけのものではありません。私たちCAFORAも、器の色を塗り分けるときに同じ構造を採っています。
釉薬と釉薬で色を分けようとすると、焼成中に釉薬が溶けて流れ、境目で際が寄ったり、にじんだり、輪のような跡が残ったりします。ロットごとに出方が変わるので、再現性が担保できません。そこで、色を分ける役を化粧土に任せ、その上に透明釉を1種類だけ全体に掛ける。境目が釉薬同士の境目ではなくなるので、仕上がりが安定します。詳しくは 食器の釉薬とは に書きました。
粉引の白がやわらかく見えるのは、ガラスの膜の下に土の白があるからです。写真では伝わりにくい質感なので、瀬戸・美濃で焼いたCAFORAの器は サンプル で実物の手ざわりを確かめてみてください(サンプルはグレーです)。
カフェで粉引の器を使うときの注意点
粉引の白は、コーヒーの濃い茶色やラテのミルクの白と並べたときに、磁器の白よりも穏やかに見えます。一杯の印象をやわらかくしたい店には合う器です。
一方で、毎日何十回も使う業務用として見るなら、確かめておきたいことがあります。
- 貫入から色が入ると、白の上ではいちばん目立つ|釉薬に細かいひび(貫入)が入ると、そこから素地側へ水が染み込み、使うほど線に色がついていきます。コーヒーを毎日注ぐ器では、この変化が早く進みます。粉引は白い化粧土がガラスのすぐ下にあるので、入った色がはっきり見えます。仕組みと見分け方は 陶器の貫入とは にまとめています
- 並べたときの白の揃い方を見る|化粧土の厚みやかかり方で、白の出方は1客ずつ変わります。1客ではなく、複数並べて確認してください
- 製品の表示を確認する|電子レンジ・食洗機に使えるかは、粉引かどうかではなく器ごとに決まります。業務で毎日回すなら、対応表示のあるものを選びます
色が入ることを「育つ」と楽しめる器もありますが、お客様に出す器では、まだらに色が入ると汚れて見えることがあります。器単体ではなく、棚に並んだときの見え方で判断するのが、業務用の考え方です。
吸水しにくい素地を選ぶと、この心配は小さくなります。素材ごとの吸水性の違いは 食器の素材の種類 に整理しました。
よくある質問
Q. 粉引の読み方は? 「こひき」です。辞典では「粉吹(こふき)」という別名も載っています。
Q. 粉引の白は釉薬の色ですか いいえ。白いのは化粧土です。鉄分の多い素地の上に白い化粧土をかけ、その上に色のない透明釉を掛けています。
Q. 粉引と刷毛目はどう違いますか 粉引は刷毛を使わずに器全体へ厚く白化粧をかけたもの、刷毛目は刷毛で白化粧を塗り、筆跡を模様として見せるものです。どちらも白い土で化粧する技法の仲間です。
Q. 粉引の器にシミができるのはなぜですか 釉薬に入った細かいひび(貫入)などから水分が素地側に入り、飲みものの色が残るためです。白い化粧土の上なので目立ちます。
Q. 粉引は美濃焼ですか 粉引は朝鮮半島に由来する技法の名前で、特定の産地の名前ではありません。美濃焼では、伝統的工芸品15品目のひとつに粉引が入っています。
まとめ
粉引とは、鉄分の多い素地に白い化粧土をかけ、透明釉を掛けた器です。白い粉を引いたように見えることからその名があり、粉吹とも呼ばれます。朝鮮半島で李朝前期に焼かれ、桃山時代に日本の茶人に注目されました。
その白は、ガラスの膜の下にある土の白です。だからやわらかく見え、同時に、入った色も目立ちます。カフェで使うなら、貫入と色の入り方、並べたときの白の揃い方、製品の表示を確かめてください。
美濃の15の様式は 美濃焼とは にまとめています。瀬戸・美濃で焼いたCAFORAのラテボウル 温 -ON-・拡 -KAKU- の手ざわりは、サンプル1点から確かめられます。

