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食器のこと2026.09.11

還元焼成と酸化焼成の違い|同じ釉薬でも器の色が変わる理由

還元焼成と酸化焼成の違い|同じ釉薬でも器の色が変わる理由

器のカタログや窯元の説明で、「還元焼成」「酸化焼成」という言葉を見かけることがあります。どちらも焼き物の焼き方の名前ですが、何が違っていて、器を使う側にどう関係するのかは、あまり説明されていません。

結論から言うと、違いは窯の中の酸素の量です。そしてその差は、器の色にそのまま出ます。同じ土、同じ釉薬、同じ形でも、焼き方が違えば別の色の器になる。ここを知っているかどうかで、届いた器を見て「思っていた色と違う」となるかどうかが変わります。

この記事では、美濃焼の産地・土岐市が公開している解説をもとに2つの焼き方を整理し、私たちが器の量産を窯元と検討するなかで実際に直面した判断もあわせて書きます。

還元焼成と酸化焼成の違いは「窯の中の酸素」

土岐市の公式解説では、2つの焼き方を次のように定義しています。

  • 酸化焼成:燃料が完全燃焼するだけの、十分な酸素がある状態で焼く
  • 還元焼成:酸素が足りない状態で、不完全燃焼のまま焼く

酸素が足りないと、炎は周りから酸素を奪おうとします。その相手になるのが、土や釉薬に含まれる鉄や銅などの金属の酸化物です。金属が酸素を奪われるかどうかで、発色が変わる。これが、焼き方で色が変わる仕組みです。

土岐市の解説は、還元の強さを窯の中の一酸化炭素(CO)の濃度で説明しています。

窯の中の状態

目安(CO濃度)

酸化焼成から外れはじめる

2%以上

還元焼成(実際的な基準)

4%以上

強還元焼成

8%以上

黒煙が発生する

10%以上

出典:酸化焼成と還元焼成の違い|土岐市公式ウェブサイト

窯の種類とも関係があります。電気窯はほとんどCOを出さないため、基本は酸化焼成です。還元焼成は、ガス窯などで酸素の供給を絞って行います。

同じ釉薬でも、焼き方で色が変わる

焼き方の差がいちばん分かりやすく出るのが、釉薬の色です。土岐市の解説に挙がっている例をまとめます。

釉薬・素地

酸化焼成

還元焼成

織部の釉薬

緑

赤(強還元焼成)

酸化鉄を2%含む鉄釉

黄瀬戸釉(黄)

青磁釉(青)

陶器の素地

赤茶色

灰色

同じ釉薬から、緑の器も赤の器もできる。 黄瀬戸の黄色と青磁の青も、同じ鉄を含む釉薬の、焼き方の違いです。釉薬の名前は、材料の名前であると同時に「どう焼いたか」の結果でもあるわけです。

釉薬そのもの——器の表面にあるガラスの層や、マットと光沢の違い——については 食器の釉薬とは にまとめています。こちらはその続きで、釉薬が窯の中でどう変わるか、という話です。

白い器にも、焼き方の差は出る

「色釉の話なら、白い器には関係ない」と思うかもしれません。ところが、白にも差が出ます。

私たちが器の量産を窯元と検討したとき、同じ形・同じ白の釉薬でも、酸化で焼くとやや黄寄りに、還元で焼くとやや青寄りに出るという前提で話が進みました。どちらも「白」ですが、並べれば分かる差です。ミルクの白、ラテアートの茶色、器の縁の見え方——カフェの一杯では、この差がそのまま写真の印象になります。

だから私たちは、焼き方を窯元任せにせず、ブランドの色味として自分たちで決める項目にしています。窯元に確認する項目の中にも、「焼成は還元か酸化か。選べるか」を入れています。

もうひとつ、実務で効いたことがあります。試作サンプルは、本製品と同じメーカー・同じ製法・同じ焼き方で作らないと、色がずれるということです。別の窯で焼いたサンプルで色を決めると、量産品が届いたときに違って見える。これは焼き物である以上避けられないので、先に説明しておくしかありません。

白の出方は、写真ではほとんど伝わりません。CAFORAの器の実物は サンプル で確かめられます(サンプルはグレーです)。光の入る店内で、実際にミルクを注いで見てもらうのがいちばん確実です。

酸化と還元、どちらが良いのか

優劣ではなく、性格の違いです。

還元焼成は、管理が難しい。 土岐市の解説によれば、還元焼成ではガス圧と酸素の供給を細かく調整する必要があり、しかも天候や風で窯の中の圧力は常に変わります。その結果、酸化と還元が交互に起きてしまう状態があり、これを「酔う」と呼びます。裏を返せば、還元焼成の器には、その揺らぎが深い色や表情として出ます。

酸化焼成は、狙った色を出しやすい。 電気窯を中心に、酸素が十分にある状態を保ちやすいので、窯の中の条件を揃えやすい。同じ色を繰り返し出すことを優先するなら、酸化のほうが扱いやすい、というのが私たちの理解です。

カフェの器にとって、この「繰り返し出せるか」は重要です。割れた1客を半年後に買い足したとき、色が揃わなければ、テーブルの上で1客だけ浮きます。産地に窯が集まっていることが継続供給の面でどう効くかは、瀬戸焼と美濃焼の違いとは に書きました。

器を別注するときに確認すべき3点

焼き方の知識は、別注で器をつくるときにいちばん役に立ちます。確認するのは次の3点です。

  1. 焼き方を聞く|還元か酸化か。同じ見本でも焼き方が変われば色が変わるので、見本と本番が同じ焼き方かを確認します
  2. サンプルは本番と同じ窯・同じ焼き方で作ってもらう|別の窯のサンプルで色を決めない。ここがずれると、量産品が届いた日に「違う」となります
  3. ロットごとの色の差を、どこまで許容するか先に決める|焼き物の色の差はゼロにはなりません。どこまでを「同じ色」とみなすかを、発注前に共有しておきます

別注全体の進め方——ロット・納期・形の決め方——は オリジナル食器を作る前に知っておきたいこと にまとめています。

よくある質問

Q. 電気窯でも還元焼成はできますか 電気窯は基本的に酸化焼成の窯です。土岐市の解説では、還元焼成を繰り返すと電気窯のヒーター線を傷める可能性があるとされています。

Q. 還元焼成の器のほうが高級ですか 焼き方で格が決まるわけではありません。揺らぎのある表情を取るか、色の再現性を取るか、という選択です。

Q. 同じ器を追加注文したら、色が少し違いました。不良ですか 焼き物は、焼成のたびに窯の中の状態が変わるため、ある程度の色の差は出ます。不良かどうかは、発注時に決めた許容範囲に照らして判断します。これから別注するなら、許容範囲を先に決めておくのが確実です。

Q. 陶器と磁器で、焼き方の影響は違いますか 陶器の素地そのものも、酸化で赤茶色、還元で灰色に変わります。素材ごとの性質は 食器の素材の種類 に整理しています。

まとめ

還元焼成と酸化焼成の違いは、窯の中の酸素の量です。酸素が足りないと、土や釉薬の金属から酸素が奪われ、色が変わる。だから同じ釉薬から、織部の緑も赤も、黄瀬戸の黄色も青磁の青も生まれます。

そしてその差は、白い器にも出ます。酸化はやや黄寄り、還元はやや青寄り。器を別注するなら、焼き方を聞くこと、サンプルを本番と同じ窯で焼くこと、色の許容範囲を先に決めること。この3つで「届いたら違った」はほとんど防げます。

CAFORAは瀬戸・美濃焼の技術のうえで、色味まで含めてバリスタと器を設計しています。焼き上がりの質感は、温 -ON-・拡 -KAKU- のサンプル1点から実物で確かめられます。

CAFORA