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食器のこと2026.09.11

上絵付けと下絵付けの違い|焼く順番で決まる色数と、業務用での選び方

上絵付けと下絵付けの違い|焼く順番で決まる色数と、業務用での選び方

藍色の染付の皿、赤や金で彩られた色絵の器。器の絵柄はどれも「焼き付けてある」ことは知っていても、どの段階で、どうやって描いているのかまでは、あまり知られていません。器を選ぶ・つくる立場でよく出てくるのが「上絵付け」「下絵付け」という言葉です。

結論から言うと、違いは、絵が釉薬(ゆうやく)の下にあるか、上にあるかです。下絵付けは、素焼きの器に絵を描いてから釉薬をかけ、高温で焼きます。上絵付けは、本焼きが終わった器の釉薬の上に絵を描き、もう一度低い温度で焼き付けます。

この順番の違いが、使える色、焼く回数、そして毎日洗う器としての扱い方を変えます。この記事では、有田・九谷・瀬戸の産地が公開している解説をもとに整理し、カフェの器としてどう選べばいいかを、器をつくる側から書きます。

上絵付けと下絵付けの違いは「釉薬の下か、上か」

まず、焼き物ができるまでの流れの中で、2つがどこに入るかを見ます。有田観光協会の解説にある有田焼の工程を並べると、次のようになります。

成形 → 素焼き(およそ900度)→ 下絵付け → 施釉 → 本焼成(1300度ほど)→ 上絵付け → 上絵焼成(700〜800度)

  • 下絵付けは、素焼きを終えた生地に「呉須(ごす)」という絵具で絵付けをします(佐賀県陶磁器工業協同組合)。そのあとに釉薬をかけて本焼成するので、絵は釉薬の層の下に閉じ込められます
  • 上絵付けは、釉薬がかかって本焼成を終えた生地に、多彩な上絵具で絵付けをします(同)。釉薬のガラス質の上に描き、低い温度でもう一度焼き付けます(有田観光協会)

下絵付け

上絵付け

描くタイミング

素焼きの後、釉薬をかける前

本焼成の後

絵の位置

釉薬の下

釉薬の上

焼く温度

本焼成の高温(有田では1300度ほど)

低温(有田では700〜800度)

色

呉須の藍色が中心

赤・緑・黄・金など、藍色以外も

代表的な呼び名

染付

赤絵・色絵

出典:有田焼ができるまで|有田観光協会/装飾加工|佐賀県陶磁器工業協同組合

釉薬そのもの——器の表面を覆うガラスの層——については 食器の釉薬とは にまとめています。上絵と下絵の違いは、このガラスの層との位置関係の違いだと考えると分かりやすくなります。

下絵付けは呉須の藍で描く

下絵付けで使う呉須は、焼くと藍色に発色する絵具です。有田の工程では、文様の線を描く「線描き」と、線の内側を塗る「濃み(だみ)」に分けて描き、呉須だけで仕上げた製品を「染付け」と呼びます。

瀬戸にも、下絵付けの伝統があります。瀬戸染付工芸館の解説によれば、瀬戸染付は磁器の素地に呉須で絵付けを施したもので、素焼きの素地に描いてから釉薬をかけて焼くと、釉薬が透明に変化し、下に描いた絵柄が鮮明に浮かび上がります。呉須の主成分は酸化コバルトで、鉄・マンガン・ニッケル・クロムなどの金属を合わせることで、藍の中にも多様な色合いが生まれます。

瀬戸で磁器が焼かれるようになったのは19世紀初め。加藤民吉が九州から技術を伝え、磁器の製造に成功しました。有田より約200年遅い出発でしたが、山水・花鳥・草花を写実的かつ繊細に描く、他の産地とは違う世界をつくってきました(出典:瀬戸染付とは|瀬戸染付工芸館)。瀬戸と美濃の産地そのものの話は 瀬戸焼と美濃焼の違いとは に書いています。

上絵付けは、色を足すほど焼く回数が増える

上絵付けの強みは、色の多さです。九谷焼では、呉須で輪郭線を描き、その上に赤・紺青・緑・黄・紫の和絵具を盛るように配色します。この和絵具は、ガラスの粉に鉄・銅・マンガンなどの金属を混ぜてつくられています。

その代わり、上絵付けは焼く回数が増えます。加賀九谷陶磁器協同組合の解説では、焼成の回数は次のとおりです。

仕上げ

焼成回数

下絵のみ

2回

上絵を描く場合

3回

金や銀を使う場合

4回

出典:九谷焼とは|加賀九谷陶磁器協同組合。同じ解説では、素焼きが800℃前後、本焼きが約1300℃、上絵を焼き付ける錦窯(きんがま)が800℃前後とされています

焼成が1回増えれば、窯に入れる手間も、割れや不良が出る機会も、納期も1回分増えます。 色の自由と引き換えに、工程が1段重くなるのが上絵付けです。私たちが器の色分けを検討したとき、上絵を含む方法をどう比べたかは オリジナルマグカップの作り方 に書きました。

絵柄のある器も無地の器も、手に取ったときの印象は写真と違います。CAFORAの器の質感は サンプル で実物を確かめられます。

カフェの器では、どちらを選ぶか

ここからは、毎日洗って使う業務用の器として見た話です。

1. 絵の位置で、表面の擦れへの強さが変わる 下絵付けは、絵が釉薬の層の下にあり、表面に出ているのは釉薬のガラスです。上絵付けは、釉薬の上に焼き付けているため、絵そのものが表面にあります。特に金・銀の上絵について、鳴海製陶は取扱いの注意として、軟らかい金属なので強く擦ったり食器同士をぶつけたりしないこと、電子レンジではスパークが起きて絵付けがはげることを挙げています(ナルミ製品のお取扱いについて)。毎日食洗機で回し、レンジで温め直す店ほど、金銀の上絵は避けたほうが無難です。

2. 色数で選ぶ 藍の濃淡で表現できる柄なら下絵付け。赤や金など複数の色が必要なら上絵付けです。

3. 数と納期で選ぶ 上絵付けは焼成が1回増えるぶん、工程も納期も重くなります。とくに手描きの上絵は1個ずつの手作業なので、数が増えても1個あたりの手間は減りません。

4. 同じ柄を量産するなら転写 店のロゴのように、同じ柄を何十個もそろえて入れたいなら、手描きより転写(デカール)が向きます。佐賀県陶磁器工業協同組合の解説では、転写にも素焼き後に貼る下絵転写、本焼成後に貼る上絵転写、釉薬の下に沈み込ませるイングレーズ転写があり、ここでも「釉薬の下か上か」の考え方がそのまま使えます。ロゴの入れ方の選び方は カフェの食器にロゴを入れる方法 にまとめています。

よくある質問

Q. 染付とは何ですか 呉須で下絵付けをし、透明の釉薬をかけて焼いたものです。有田では、呉須だけで絵付けした製品を「染付け」と呼んでいます。

Q. 下絵付けでは藍色しか使えないのですか 呉須の藍が中心です。ただし瀬戸染付工芸館の解説では、呉須に鉄・マンガン・ニッケル・クロムなどを合わせることで、多様な色合いがつくられるとされています。

Q. 上絵付けの器は食洗機や電子レンジで使えますか 製品の表示に従ってください。金・銀の上絵がある器は、電子レンジでスパークし、絵付けがはげる原因になります(鳴海製陶の取扱い説明より)。

Q. 上絵と下絵を組み合わせた器もありますか あります。九谷焼では、呉須で輪郭線を描いた上に和絵具で色を盛ります。下絵のみなら焼成2回、上絵を描くと3回と、組み合わせるほど焼く回数が増えます。

まとめ

上絵付けと下絵付けの違いは、絵が釉薬の下にあるか、上にあるかです。下絵付けは素焼きの後に呉須で描き、釉薬をかけて高温で焼く。上絵付けは本焼成の後に釉薬の上に描き、低温でもう一度焼き付ける。

色の自由度は上絵付けが上。その代わり焼く回数が増え、絵が表面にあるぶん、擦れや電子レンジの扱いに注意が要ります。毎日洗う器なら、色数・数量・洗い方の3つで選ぶのが確実です。

器の別注で柄や色をどう入れるかは、形と工程を一緒に考えると失敗が減ります。進め方は オリジナル食器を作る前に知っておきたいこと にまとめています。CAFORAのラテボウル 温 -ON-・拡 -KAKU- は、本購入なら30個から店のロゴを転写して入れられます。

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