瀬戸ノベルティとは|世界へ輸出された陶磁器人形と、瀬戸の型の技術
瀬戸のやきものを調べていくと、茶碗や皿ではないものが出てきます。人形、動物、置物。瀬戸ノベルティと呼ばれるものです。
食器の話を探しているときには寄り道に見えるかもしれません。ただ、ここには型で同じ形を正確に繰り返す技術が詰まっていて、これは別注の器をつくるときに直結する話です。
この記事では、瀬戸市とセトノベルティ匠ネットワークが公開している資料をもとに瀬戸ノベルティを整理し、そのうえで「同じ器を何十個そろえる」という発注の現実にどうつながるのかを書きます。
瀬戸ノベルティとは|陶磁器製の置物・装飾品のこと
瀬戸市の説明では、ノベルティは「ノベルティ -Novelty-」と呼ばれる置物や装飾品で、瀬戸を代表するやきものの一つとされています。セトノベルティ匠ネットワークもノベルティ(陶磁器製の人形・置物)と定義しています。
つまり、用途のある食器ではなく、飾るためのやきものです。具体例として招き猫、稲荷狐、ビスク人形、ドレスデン人形などが挙げられています。
瀬戸はもともと1000年近くやきものを焼いてきた土地です(瀬戸焼とは)。そこに、飾り物という別のジャンルが産業として立ち上がった、という位置づけになります。
瀬戸ノベルティの歴史|ほとんどが輸出向けだった
瀬戸市の資料は、ノベルティについて他の産地には見られない生産量と高い技術を誇り、そのほとんどが輸出向けの製品だったと説明しています(出典:ノベルティ・こども創造館|瀬戸市)。
セトノベルティ匠ネットワークの資料では、明治6(1873)年 ウィーンで開催された万国博覧会に出展した記録が挙げられ、その後ノベルティは「セトノベルティ」として精巧な造形や繊細な絵付、多彩なラインナップなどが海外で高い評価を得て、戦後の瀬戸のやきものづくりの中心的な役割を担いましたとされています(出典:セトノベルティとは|セトノベルティ 匠ネットワーク)。
ここは押さえておきたい点です。戦後の瀬戸の中心にあったのは、食器ではなくノベルティだった時期がある、ということです。瀬戸に磁器の技術が入ってきた経緯は 加藤民吉とは に書きました。
そして縮小の時期も、両方の資料が同じ方向を示しています。
- 瀬戸市:1980年代末期以降、急激な円高や市場の変化などによって生産量やメーカーが大きく減少しました
- 匠ネットワーク:1980年代以降、円高、新素材の登場等、徐々に生産数が少なくなる
輸出で伸びた産業が、為替と市場の変化で縮んだという流れです。国内での知名度が低いのも、製品のほとんどが海外に出ていたためです。
瀬戸ノベルティの技術|原型・石こう型・鋳込み・絵付け
技術については、瀬戸市の説明が簡潔です。ノベルティは原型・石こう型・鋳込み・絵付けの一連の高い技術によって、多くの優れた製品が欧米はじめ世界に輸出されてきましたとされています。
この4つは、そのまま工程の順番になっています。
工程 | やること |
|---|---|
原型 | 最初のひとつを立体で作る |
石こう型 | 原型から、複製するための型を起こす |
鋳込み | 型に泥漿(液状の粘土)を流し込んで成形する |
絵付け | 焼いた素地に色を入れる |
匠ネットワークの資料も、特徴として石膏型による成形と分業による生産体制、そして小型から大型製品まで生産可能であることを挙げています。
複雑な形を、型を介して何度も再現する。 これがノベルティの技術の核です。人形の指先や動物の耳のような細かい形状を、手びねりではなく型で繰り返すからこそ、産業として成立していました。
型の技術が、カフェの別注の器につながる
ここからは、器をつくる側としての話です。
飾り物と飲み物の器は用途が違いますが、「原型をつくる → 型を起こす → 同じものを複数つくる」という順番は同じです。カフェのオリジナル食器も、30個つくるなら型が要ります。
そして、ここが発注する側にとって一番効いてくる部分でもあります。型を起こす費用と時間が、小ロットのハードルそのものだからです。最低ロットが生じる理由は 小ロットでオリジナル食器を作る方法 に書いています。
私たちがこの工程に3D陶器プリンターを使っているのは、そこを動かすためです。原型の段階を試作で何度も回してから型に進めるので、「一発勝負で型を起こす」必要がありません。仮説を立てて形をつくり、試飲会でバリスタに使ってもらい、直してまた焼く。感覚だけで決めず、検証してから形を確定させます。3Dプリンターと型づくりの関係は 3Dプリンターで陶器は作れる? に整理しました。
実際に焼き上がった器の厚みや口当たりは、写真では分かりません。手にとって確かめたい方は CAFORAのサンプル をご利用ください。
よくある質問
Q. 瀬戸ノベルティとは何ですか 瀬戸でつくられてきた陶磁器製の置物・人形・装飾品のことです。瀬戸市は「瀬戸を代表するやきものの一つ」と説明しています。
Q. なぜ日本ではあまり知られていないのですか 製品のほとんどが輸出向けだったためです。瀬戸市の資料でも、国内での知名度が低いことが指摘されています。
Q. 瀬戸ノベルティはいつ頃が最盛期ですか 匠ネットワークの資料では、戦後の瀬戸のやきものづくりの中心的な役割を担ったとされ、1980年代以降に円高や新素材の登場などで生産数が減っていったとされています。
Q. ノベルティはどうやって作るのですか 瀬戸市の説明では、原型・石こう型・鋳込み・絵付けという一連の工程でつくられます。
Q. ノベルティの技術は食器づくりと関係がありますか あります。原型から石こう型を起こして同じ形を複数つくるという流れは、オリジナル食器を小ロットで製作するときの工程と共通しています。
まとめ
瀬戸ノベルティとは、瀬戸でつくられてきた陶磁器製の置物・人形のことです。ほとんどが輸出向けで、精巧な造形と繊細な絵付が海外で評価され、戦後の瀬戸のやきものづくりの中心を担いました。1980年代以降、円高や市場の変化によって生産は大きく縮小しています。
技術の核は、原型・石こう型・鋳込み・絵付けという工程で、複雑な形を型で繰り返し再現することにあります。この「型で同じものを揃える」という考え方は、いまカフェが別注の器を30個つくるときの工程とそのまま重なります。
瀬戸ノベルティと同じ鋳込みの技術で、CAFORAはラテボウル 温 -ON-・拡 -KAKU- を30個から店のロゴ入りでつくっています。陶磁器の置物では、洋食器メーカーのデザイナーを経た菊池俊治さんの招き猫 manekineko も取り扱っています。

