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食器のこと2026.09.16

赤津焼とは|瀬戸に伝わる7つの釉薬と12の装飾技法、器の選び方

赤津焼とは|瀬戸に伝わる7つの釉薬と12の装飾技法、器の選び方

瀬戸の器を調べていると、「赤津焼」という名前に行き当たります。瀬戸焼の一種のようだけれど、別の名前が付いている。どう違うのかが分かりにくい呼び方です。

結論から言うと、赤津焼は瀬戸市の赤津地区で焼かれる陶器で、国の伝統的工芸品に指定されています。そして特徴は産地名そのものよりも、7種類の釉薬と12種類の装飾技法という「引き出しの多さ」にあります。

この記事では、愛知県と伝統的工芸品産業振興協会が公開している資料をもとに赤津焼を整理し、そのうえでカフェの器として見るときにどこを判断材料にするかを書きます。

赤津焼とは|瀬戸市赤津地区で焼かれる国の伝統的工芸品

赤津焼の産地は瀬戸市です。国の伝統的工芸品としての指定年月日は昭和52年3月30日とされています(出典:赤津焼|伝統工芸 青山スクエア・伝統的工芸品産業振興協会)。

愛知県の解説では、赤津焼の特徴は織部釉、志野釉、黄瀬戸釉、古瀬戸釉、灰釉、御深井釉、鉄釉の7種類の釉薬と、へら彫り、印花、櫛目、三島手など12種類の多彩な装飾技法にあるとされています(出典:赤津焼|あいちの地場産業・愛知県)。

つまり赤津焼は、「この形」「この色」と一つに決まる焼き物ではありません。技法の幅そのものが看板になっている産地です。瀬戸焼全体の成り立ちは 瀬戸焼とは にまとめています。

赤津焼の7種類の釉薬|一つの産地に色の引き出しが7つある

7種類の釉薬は、それぞれ別の色と肌をつくります。

釉薬

大まかな表情

織部釉

銅による緑

志野釉

長石釉の白

黄瀬戸釉

灰釉系の黄

古瀬戸釉

中世の瀬戸に連なる釉

灰釉

草木の灰を使う釉

御深井釉

淡い青緑に発色する灰釉

鉄釉

鉄の量で黒〜褐色

注目したいのは、これが別々の産地の話ではなく、一つの地区の中に並んでいることです。織部と志野は美濃桃山陶としても語られますが(織部焼・志野焼・黄瀬戸の違い)、赤津ではそれらが同じ産地の技法として受け継がれています。御深井については 御深井とは に別途書きました。

器を選ぶ側から見ると、ここは実務的な意味があります。同じ工房で色の方向をふり幅をもって相談できるということだからです。釉薬の種類によって何が変わるかは 食器の釉薬とは に整理しています。

赤津焼の12種類の装飾技法|色ではなく「肌」で表情をつくる

装飾技法は、伝統的工芸品産業振興協会の資料に12種類が挙げられています。

へら彫り、印花、櫛目、三島手、削り目、へら目、たたき、そぎ、透かし彫り、布目、はり付け、浮かし彫り

並べてみると分かるのは、そのほとんどが「掘る・押す・削る・貼る」=素地の段階で肌に凹凸をつくる技法だということです。絵を描いて色を足すのではなく、成形のうちに表情を決めていく方向です。

成形そのものも、同資料ではろくろ、たたら、手ひねりによって形を作る、と説明されています。ろくろは回転させながら手で形をつくる技法、たたらは粘土を一定の厚みの板状にする方法、手ひねりは陶土を紐や袋の形にして組む技法です。

飲み物の器として見ると、この凹凸は見た目だけの話ではありません。指が触れる位置に櫛目や布目があると、持ったときの滑りにくさや重さの感じ方が変わります。私たちが器を設計するときも、口元と側面の手ざわりは図面ではなく現物で確かめています。実物の手ざわりは CAFORAのサンプル で確認できます。

赤津焼の歴史|須恵器から桃山の茶陶へ

歴史については、2つの公的な資料でやや説明の力点が違います。両方を並べておきます。

  • 伝統的工芸品産業振興協会:赤津焼の始まりは、奈良時代(700年頃)に焼かれていた須恵器という土器にまで遡り、江戸時代初期に現在ある伝統的技術・技法や名称が確立しました
  • 愛知県:起源は奈良時代の須恵器にまでさかのぼります。鎌倉時代に釉薬を用いたのはこの地方のみであったといわれています。安土・桃山時代には、茶道の発展の影響を受け、志野、織部など現在の赤津焼の根幹をなす技法が確立されました

共通しているのは出発点が奈良時代の須恵器であることと、釉薬を使う技術が早い段階でこの地方にあったことです。「いつ今の形になったか」は、技法の確立(安土・桃山)を見るか、名称を含めた体系の確立(江戸時代初期)を見るかで表現が変わります。

中世に釉薬をかけた焼き物を焼いていたという瀬戸の位置づけは、産地の違いを見るうえでも効いてきます。瀬戸と美濃の関係は 瀬戸焼と美濃焼の違いとは に書きました。

カフェの器として赤津焼をどう見るか

ここからは、器をつくる側・使う側としての話です。

1. 色は「銘柄」ではなく焼き方の結果|織部の緑も鉄釉の黒も、釉薬の調合と焼成条件で動きます。同じ釉薬名でも窯元が違えば色は同じになりません。カタログの写真だけで決めず、実物を1つ取り寄せるのが確実です。

2. 凹凸は洗浄と相性がある|彫りや布目の器は表情が豊かな一方、毎日洗って積む業務用では汚れの残りやすさ・重ね置きの安定を確認しておきたいところです。破損の考え方は カフェの食器の破損率はどれくらい? にまとめています。

3. 追加発注のときに同じ色が出るかを先に聞く|これは赤津焼に限らず、釉薬を使う器に共通します。1年後に同じ器を足したいなら、発注前に窯元・メーカーへ確認してください。

CAFORAの器も瀬戸・美濃の技術で焼いています。私たちは伝統的な様式をそのまま再現するのではなく、バリスタが届けたい体験から形を決めて、3D陶器プリンターで試作を回し、瀬戸・美濃の工房で焼き上げています。産地の技術は、守るためではなく新しい体験のために受け継ぐ、という立場です。

よくある質問

Q. 赤津焼とはどこで焼かれる焼き物ですか 愛知県瀬戸市の赤津地区で焼かれる陶器です。国の伝統的工芸品に指定されています。

Q. 赤津焼と瀬戸焼は違うものですか 赤津焼は瀬戸で焼かれる焼き物のうち、赤津地区のものを指す呼び名です。まったく別の産地というわけではありません。

Q. 赤津焼の7つの釉薬とは何ですか 愛知県の資料では、織部釉・志野釉・黄瀬戸釉・古瀬戸釉・灰釉・御深井釉・鉄釉の7種類が挙げられています。

Q. 赤津焼が国の伝統的工芸品に指定されたのはいつですか 伝統的工芸品産業振興協会の資料では、昭和52年3月30日とされています。

Q. 赤津焼はカフェの業務用に使えますか 器によります。装飾技法による凹凸や厚みが器ごとに違うため、洗浄条件・重ね置き・追加発注の可否を窯元やメーカーに確認したうえで選んでください。

まとめ

赤津焼とは、愛知県瀬戸市の赤津地区で焼かれる陶器で、昭和52年3月30日に国の伝統的工芸品に指定されています。特徴は、織部・志野・黄瀬戸・古瀬戸・灰釉・御深井・鉄釉という7種類の釉薬と、へら彫り・印花・櫛目・三島手をはじめとする12種類の装飾技法の幅にあります。

歴史の出発点は奈良時代の須恵器で、鎌倉時代には釉薬を用いる技術がこの地方にありました。色と肌の引き出しが多いぶん、同じ「赤津焼」でも器ごとに表情と扱いやすさが変わるのが、使う側にとっての要点です。

赤津と同じ瀬戸・美濃の産地で焼いたラテボウル、両手で包む 温 -ON- と、ラテアートを広く見せる 拡 -KAKU- は、サンプル1点から手に取って確かめられます。

CAFORA