招き猫の小判の意味|持ち物の種類と、鈴・首輪・前垂れについて

店先の招き猫をよく見ると、手を上げているだけでなく、いろいろなものを身につけています。大きな小判、首の鈴と首輪、胸の前垂れ。こうした持ち物にも、それぞれ意味があるのでしょうか。
先に要点を書きます。小判は商売繁盛のしるしで、二頭身の常滑系の招き猫が抱えているのが典型です。小判のほかにも、鯛・だるま・打出の小槌などを持つ招き猫があります。一方で、小判を持たないことに意味を込めた招き猫もあります。鈴・首輪・前垂れの意味は、産地や愛好団体の公式な説明では確認できませんでした。
この記事では、愛知県の観光公式サイト、瀬戸市の招き猫ミュージアム、とこなめ観光協会、世田谷の豪徳寺の公式サイトをもとに、招き猫の持ち物について分かっていることと、分かっていないことを分けて整理します。手の上げ方と色の意味は 招き猫の右手と左手の意味 で扱っているので、ここでは持ち物だけに絞ります。
招き猫の小判の意味:商売繁盛のしるし
小判を抱えた招き猫は、多くの人が「招き猫」と聞いて思い浮かべる姿です。愛知県の観光公式サイトは、常滑系の招き猫をこう紹介しています。
大きな耳、まるい顔、大きな(垂れた)目の二頭身スタイルが常滑系の猫。がっちりつかんだ大きな小判が商売繁盛を表現しています。
出典:愛知で幸せ探しの旅 招き猫の二大産地 常滑・瀬戸へ行こう!|Aichi Now(愛知県公式観光サイト)
とこなめ観光協会の解説も、招き猫は片方の前足を上げて手招きをし、もう片方の前足に小判を握りしめていると書いています(出典:常滑系招き猫(観光庁 多言語解説文データベース/とこなめ観光協会))。
瀬戸市の招き猫ミュージアムは、小判を抱えた二頭身の「常滑タイプ」を最もポピュラーで生産高が多い招き猫とし、昭和20年代後半に現在のモデルが完成したとしています(出典:招き猫ミュージアム「招き猫作り100年のまち」)。
つまり、小判を抱えた招き猫は戦後の常滑で型として定着したかたちです。上げた手で人やお金を招き、もう片方の手の小判で商売繁盛を表す。招き猫の持ち物の中で、意味がはっきり説明されているのは、まずこの小判です。
小判だけではない、招き猫の持ち物の種類
招き猫が抱えているのは小判だけではありません。招き猫ミュージアムのコラムは、持ち物についてこう書いています。
典型的な「常滑系」が抱えているのは小判だが、鯛、だるま、打出の小槌、大入額などなど、さまざまな縁起物を持った招き猫がいる。
並べると、こうなります。
持ち物 | 縁起物として一般に言われること |
|---|---|
小判 | 商売繁盛(常滑系の典型) |
鯛 | 「めでたい」に通じる祝いの魚 |
だるま | 七転び八起きの縁起物 |
打出の小槌 | 振ると望みのものが出るとされる宝物 |
大入額 | 客の入りが多いことを願う額 |
鯛からあとの4つは、招き猫に限らず日本で広く使われてきた縁起物です。招き猫に持たせることで、手招きの御利益にもう一つ願いを重ねていると読むことができます。
同じコラムは、お菓子、乾電池、ラーメン丼、印鑑など自社商品を抱えてアピールする企業プレミアムものもあると紹介しています。愛知県の観光公式サイトも、県内の食堂にある超特大のえびフライを抱えた招き猫を紹介しています。小判の位置に何を持たせるかは、かなり自由に変えられてきたということです。
小判を持たない招き猫:豪徳寺の招福猫児
反対に、小判を持たないことに意味を込めた招き猫もあります。東京・世田谷の豪徳寺の招き猫「招福猫児(まねきねこ)」です。
豪徳寺は公式サイトで、招福猫児は人を招いて「縁」をもたらしてくれるものの、福そのものを与えてくれるわけではありませんと説明しています。その縁を生かせるかどうかは本人次第で、報恩感謝の気持ちがあれば自然と福が訪れる。この教えから、豪徳寺の招福猫児は小判を持たず、右手だけを上げているとされています(出典:招き猫について|豪徳寺)。
常滑系の小判が「商売繁盛」を形にしたものだとすれば、豪徳寺の招福猫児は、あえて何も持たないことで「縁」を表している。同じ招き猫でも、持ち物の有無で込められた考え方が違うのは興味深いところです。

写真は、石川県で活動する作家・菊池俊治さんの招き猫「manekineko」の赤です。小判を持たず、手を上げる所作を中心に形をまとめた、現代の作家による作品です。持ち物を省くと、招き猫の輪郭そのものの美しさが前に出てきます。
鈴・首輪・前垂れの意味:公式な説明は見当たらない
小判とは対照的に、鈴・首輪・前垂れの意味については、今回確認した産地や愛好団体の公式な説明には記述がありませんでした。インターネット上には意味を説明する記事も多くありますが、出典がはっきりしないものが多く、この記事では採用していません。
確認できたのは、意味ではなくかたちの特徴としての記述です。
- 前垂れ(前掛け)|招き猫ミュージアムは、瀬戸の古いかたち「古瀬戸タイプ」を細身で前垂れを着けたかたちとし、京都の伏見人形が原型とも言われると書いています。愛知県の観光公式サイトも、瀬戸系の特徴として前掛けのフリルを挙げています
- 鈴・首輪|産地の公式な説明では、意味についての記述は見つかりませんでした
前垂れは、意味より先に瀬戸系の見分けどころとして知っておくと役に立ちます。細身で前垂れを着けていれば瀬戸系、二頭身で小判を抱えていれば常滑系、というのが典型です。くわしくは 招き猫の瀬戸と常滑の違い にまとめています。前垂れのフリルのような細部の表現は、瀬戸で育った型の技術と結びついています。その技術の流れは 瀬戸ノベルティとは をご覧ください。
店に置く招き猫を持ち物で選ぶなら
店に置く招き猫を選ぶとき、持ち物は一つの手がかりになります。
- 商売繁盛をはっきり願う|小判を抱えた常滑系が分かりやすい選択です
- 祝いの意味を重ねたい|鯛や大入額など、店の願いに合う縁起物を持つものもあります
- 縁を大切にしたい、すっきり見せたい|持ち物のない招き猫や、作家ものが候補です
カウンターに置くなら、持ち物の多い招き猫は器の横でにぎやかに見え、持ち物のない招き猫は器と並んでも静かに馴染みます。どちらが合うかは、店で使っている器の雰囲気次第です。持ち物のない招き猫の一例が、写真で紹介した菊池俊治さんの manekineko です。素材から招き猫を選ぶ見方は 招き猫の陶器と磁器の選び方 にまとめています。
よくある質問
Q. 招き猫の小判にはどんな意味がありますか 愛知県の観光公式サイトは、常滑系の招き猫が抱える大きな小判を「商売繁盛」を表現したものと紹介しています。
Q. 小判を持っていない招き猫もありますか あります。世田谷の豪徳寺の招福猫児は、小判を持たず右手を上げています。豪徳寺は、招福猫児は「縁」を招くもので、福そのものを与えるわけではないという教えから、と説明しています。
Q. 小判以外にどんな持ち物がありますか 招き猫ミュージアムは、鯛、だるま、打出の小槌、大入額などを挙げています。企業が自社商品を抱えさせた招き猫もあります。
Q. 招き猫の鈴や首輪にはどんな意味がありますか 今回確認した産地や愛好団体の公式な説明には、鈴・首輪の意味についての記述はありませんでした。
Q. 前垂れを着けた招き猫はどこの型ですか 招き猫ミュージアムは、細身で前垂れを着けたかたちを瀬戸の「古瀬戸タイプ」と紹介しています。
まとめ
招き猫の持ち物で、意味がはっきり説明されているのは小判=商売繁盛です。小判を抱えた二頭身の常滑系は、昭和20年代後半に今のかたちが完成しました。小判のほかにも鯛・だるま・打出の小槌・大入額などを持つ招き猫があり、反対に豪徳寺の招福猫児は小判を持たないことで「縁」を表しています。
鈴・首輪・前垂れの意味は、公式な説明では確認できませんでした。前垂れは、瀬戸系を見分ける手がかりとして覚えておくと役に立ちます。
小判を持たず、手を上げる所作でまとめた菊池俊治さんの manekineko は、CAFORAで1体から購入できます。

