招き猫の絵付け体験|瀬戸・常滑でできる場所と、型と素焼きの話

真っ白な招き猫に、自分で目を入れ、耳の内側を塗り、首輪の色を決める。招き猫の絵付け体験は、招き猫の産地である瀬戸と常滑で、通年で受け付けている施設があります。
先に要点を書きます。招き猫の絵付け体験は、焼かずに持ち帰る塗り絵と、釉薬をかけて窯で焼き上げる絵付けに分かれます。焼き上げる方は、描いた日には持ち帰れず、焼き上がりを後日受け取るのが基本です。行く前に「どちらの体験か」を確かめておくと、当日の段取りを決めやすくなります。
この記事では、瀬戸と常滑で招き猫の絵付けができる場所を、施設と愛知県の観光公式サイトの情報をもとに紹介し、絵付けの前にある「型」と「素焼き」の工程も説明します。私たちCAFORAは、瀬戸と美濃で器を焼いています。料金や営業時間は変わるので、この記事では書かず、各施設の公式サイトに任せます。
招き猫の絵付け体験ができる場所:瀬戸と常滑
招き猫の二大産地とされる瀬戸と常滑には、それぞれ招き猫の絵付けができる施設があります。瀬戸系と常滑系の招き猫は顔立ちが違い、その違いは 招き猫の瀬戸と常滑の違い にまとめました。どちらの産地で描くかで、手元に残る招き猫のかたちも変わります。
施設 | 場所 | 公式情報で確認できたこと |
|---|---|---|
STUDIO 894 | 愛知県瀬戸市 | 招き猫をはじめ、開運や招福の季節飾りなどの素地に絵付け。ワークショップは毎日開催 |
まちの駅 常滑焼ヤマタネ | 愛知県常滑市 | 招き猫・お皿・カップに絵付け。招き猫は右手上げ・左手上げから選ぶ |
出典:STUDIO 894、STUDIO 894|Aichi Now、まちの駅 常滑焼ヤマタネ|Aichi Now、陶芸体験|まちの駅 常滑焼ヤマタネ
瀬戸:STUDIO 894
STUDIO 894は、瀬戸市薬師町の陶磁器工芸メーカー中外陶園が手がける施設です。中外陶園は、創業以来「薬師窯」の窯銘で干支置物や招き猫などの縁起物をつくってきた会社だと、施設の公式サイトは説明しています。施設は、絵付けの体験、作家の企画展、瀬戸焼の器でコーヒーを出すスタンドで構成されています。
招き猫の置物をつくってきた窯元の施設なので、描く素地そのものが、瀬戸の招き猫づくりの現場から来ているということです。瀬戸は招き猫を磁器で量産した最初の産地とされ、その流れは 招き猫の由来 に書いています。
常滑:まちの駅 常滑焼ヤマタネ
常滑のまちの駅 常滑焼ヤマタネでは、招き猫のほか、お皿やカップへの絵付け、常滑焼の手びねりの体験ができると、愛知県の観光公式サイトが紹介しています。施設の案内では、招き猫は右手上げと左手上げから選び、透明釉で焼成するとしています。右手と左手の意味は 招き猫の右手と左手の意味 を読んでから選ぶと、描く前に一体の意味が決まります。
常滑の町には、高さ3.8m・幅6.3mの巨大な招き猫「とこにゃん」もあります(出典:招き猫のまち常滑で、福を招く旅|Aichi Now)。常滑の焼き物そのものについては 常滑焼とは をご覧ください。
招き猫の絵付け体験は3種類:塗り絵・下絵付け・転写
STUDIO 894の公式サイトは、絵付けの体験を3つのコースに分けて説明しています。この分け方は、ほかの施設を選ぶときにもそのまま使えます。
コース | 何をするか | 焼成 | 受け取り |
|---|---|---|---|
陶器ぬり絵 | 陶器の素地に絵の具・色鉛筆・マーカーで描く | 行わない | 乾いたらその日に持ち帰り |
磁器絵付け | 磁器の素地に専用の下絵の具で描く | 釉薬をかけて焼成 | 約1ヶ月後 |
銅版転写 | 磁器の素地に絵柄の転写シートを水で貼る | 釉薬をかけて焼成 | 約1ヶ月後 |
STUDIO 894は、磁器絵付けについて実際のやきものに使うものと同じ、専用の下絵の具で描き、描き終えたら施設で預かって釉薬をかけ、焼成して仕上げると説明しています。
塗り絵は焼かないので、色は表面に乗っているだけです。飾る分には十分ですが、水拭きやこすれには弱くなります。下絵付けは、描いた色が釉薬の下に閉じ込められるので、焼き上がったあとは色が落ちにくくなります。長く店に置くつもりなら、焼成するコースを選ぶとよいでしょう。釉薬の下に描くか上に描くかの違いは 上絵付けと下絵付けの違い で詳しく比べています。
転写は、同じ柄をきれいに入れたいときに向く方法です。器にロゴを入れるときにも使われる技法で、その使い分けは カフェの食器にロゴを入れる方法 にまとめました。
招き猫の絵付けの前にある「型」と「素焼き」
絵付け体験で手渡される白い招き猫は、すでにいくつもの工程を通ってきたものです。
型でかたちをつくる
瀬戸の招き猫は、型の技術と深く結びついています。瀬戸のノベルティ(陶磁器の置物や人形)は、原型・石こう型・鋳込み・絵付けの一連の技術でつくられてきました。泥状にした土を石膏型に流し込み、型が水を吸って固まった土を取り出す方法が鋳込みです。招き猫ミュージアムは、招き猫をセト・ノベルティー生産の原点ともいえるもののひとつとしています。瀬戸の型の技術は 瀬戸ノベルティとは に書いています。
型でつくると、同じ輪郭の招き猫をいくつも揃えられます。だからこそ、絵付け体験では同じかたちの招き猫が、描く人によってまったく違う顔になるのがおもしろいところです。
素焼きをしてから描く
下絵付けは、一般に素焼きを終えた素地に描きます。佐賀県陶磁器工業協同組合の解説などをもとにすると、工程は次の順番です。
成形 → 素焼き → 下絵付け → 施釉 → 本焼成
素焼きは、成形して乾かした素地を、本焼成より低い温度で一度焼いておく工程です。素焼きの素地は水を吸うので、筆を置いた瞬間に絵の具がしみ込みます。紙に描くより線がにじみやすく、描き直しがききにくいのはこのためです。
私たちも器をつくる過程で、成形・乾燥・素焼き・施釉・本焼成という同じ道を通ります。焼けば土は縮み、色は窯の中で変わります。描いたときの色と、焼き上がった色が違って見えることがあるのは、絵付け体験でも同じです。
招き猫の絵付け体験に行く前に確かめること
最後に、予約の前に確かめておきたいことを並べます。
- 焼成するコースか、塗り絵か。焼成するなら当日は持ち帰れない
- 受け取り方法。STUDIO 894の焼成コースは約1ヶ月後の引き取りと案内している。郵送の可否は施設に確認する
- 年齢の条件。STUDIO 894は5才以上、小学生以下は保護者の付き添いが必要としている
- 予約の要否と最新の料金・時間。施設の公式サイトで確かめる
瀬戸では、9月29日の招き猫の日にあわせて「来る福招き猫まつり」が開かれています。まつりの時期に合わせて絵付けをする楽しみ方もあります。まつりについては 招き猫の日とは にまとめました。
よくある質問
Q. 招き猫の絵付け体験はどこでできますか 瀬戸市のSTUDIO 894、常滑市のまちの駅 常滑焼ヤマタネなどで体験できます。最新の内容と予約方法は各施設の公式サイトで確かめてください。
Q. 絵付けした招き猫はその日に持ち帰れますか 焼かない塗り絵のコースなら、乾いたらその日に持ち帰れます。釉薬をかけて焼成するコースは、STUDIO 894では約1ヶ月後の引き取りと案内されています。
Q. 塗り絵と焼成する絵付けはどちらがいいですか 飾るだけなら塗り絵でも十分です。長く置く、手で触れる場所に置くなら、色が釉薬の下に閉じ込められる焼成のコースのほうが色が落ちにくくなります。
Q. 子どもでも招き猫の絵付けはできますか STUDIO 894は5才以上を対象とし、小学生以下は保護者の付き添いが必要としています。施設によって条件が違うので、予約の前に確かめてください。
Q. 絵付けの招き猫は何でできていますか 施設やコースによって陶器と磁器があります。STUDIO 894では、塗り絵は陶器、下絵付けと転写は磁器の素地を使うと説明しています。陶器と磁器の違いは 招き猫の陶器と磁器の選び方 をご覧ください。
まとめ
招き猫の絵付け体験は、瀬戸のSTUDIO 894や常滑のまちの駅 常滑焼ヤマタネなどでできます。体験は、焼かずに持ち帰る塗り絵と、釉薬をかけて焼き上げる絵付けに分かれ、焼き上げる方は後日の受け取りになります。
手渡される白い招き猫は、型で成形し、素焼きを済ませたものです。同じかたちの素地が、描く人によって違う顔になる。それが、産地で絵付けをするいちばんの楽しさです。
自分で描くのとは別に、作家の手による一体を置きたいなら、石川で活動する菊池俊治さんの manekineko も選択肢の一つです。CAFORAで1体から購入できます。

