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食器のこと2026.10.07

大堀相馬焼とは|青ひび・走り駒・二重焼の特徴とカフェの器の選び方

大堀相馬焼とは|青ひび・走り駒・二重焼の特徴とカフェの器の選び方

器の表面いっぱいに走る細かいひび。そこに描かれた、勢いよく駆ける馬。大堀相馬焼は、一度見ると忘れにくい器です。けれども、その見た目がどうやって生まれ、使い心地にどう関わるのかまでは、あまり語られていません。

先に要点を書きます。大堀相馬焼とは、福島県双葉郡浪江町の大堀でつくられてきた焼き物です。特徴は三つあります。表面を覆うひび割れ模様の「青ひび」、馬の絵「走り駒」、そして器を二重にして焼く「二重焼」です。

この記事では、伝統的工芸品産業振興協会と福島県の記述をもとに、この三つの特徴と産地の歩みを整理します。そのうえで、瀬戸と美濃で器を焼いている立場から、カフェの器として大堀相馬焼を見るときの判断軸をお伝えします。

大堀相馬焼とは:相馬藩が育てた東北最大の産地

大堀相馬焼の始まりについて、伝統的工芸品産業振興協会はこう書いています。

大堀相馬焼は江戸時代初期(1690年)に作り始められたと言われています

同協会によれば、その地方を治めていた相馬藩が焼き物づくりを保護・育成したため、江戸時代末期には100余りの窯元が並ぶ、東北地方でいちばん大きな産地になりました。

伝統的工芸品としての指定年月日は昭和53年2月6日、主要製造地域は双葉郡浪江町です。主な製品には茶器・酒器・花器・灰皿が挙げられています。

その後、産地は大きな転機を迎えました。福島県が2014年に掲載した記事によれば、大堀相馬焼協同組合は原発事故によって避難を余儀なくされ、作陶ができなくなりました。そのうえで、国や二本松市の協力を得て、二本松市内の工業団地に「陶芸の杜 おおぼり二本松工房」として再開した、と記されています。日本の産地全体の見取り図は 日本の焼き物の種類 に整理しています。

大堀相馬焼の「青ひび」:器全体を覆うひび割れ模様

一つめの特徴が「青ひび」です。伝統的工芸品産業振興協会は次のように説明しています。

青磁釉という青みのある透明なガラス質で、表面をおおった陶器を主に作っています。ひび割れが模様のように器全体をおおっていることから「青ひび」と呼ばれており

同協会は、青磁釉の主な原料である砥山石について「この産地のみで採れる原料です」と書いています。青ひびの色は、この土地の石から来ているということです。

ひびを目立たせる工程もあります。同協会の製作工程の紹介では、完成した製品の「ひびわれ」をはっきり見せるために、墨汁を擦り込んで布でふき取る「墨入れ」を行うとされています。

ひびは偶然の傷ではなく、狙ってつくり、さらに強調している模様です。釉薬に入るひびそのものの仕組みは 陶器の貫入とは に詳しく書きました。

「走り駒」と「二重焼」:絵と構造の二つの個性

二つめの特徴が「走り駒」です。伝統的工芸品産業振興協会は、素焼きのあとに描かれるこの馬の絵について、次のように書いています。

「走り駒」と呼ばれる馬の絵はこの産地だけにある絵のかたちです

福島県の記事では、走り駒を「相馬藩の御神馬」の図案と紹介しています。

三つめが「二重焼」です。同協会の産地紹介記事では、ひとまわり大きさの違う器を2個重ねて焼いて「二重」にした湯のみについて、入れたお茶が冷めにくく、熱いお湯を入れてもしっかり手に持てると説明されています。同協会が示す技術・技法にも、素地の模様付けの一つとして「二重」が挙げられています。

三つの特徴を整理すると、こうなります。

特徴

何か

器への影響

青ひび

青磁釉の表面を覆うひび割れ模様

見た目の主役。ひびに墨を入れて強調する

走り駒

素焼きのあとに描く馬の絵

器ごとに手描きの表情が出る

二重焼

大きさの違う器を2個重ねて焼く構造

冷めにくく、熱くても持ちやすい

二重焼は、見た目ではなく構造の工夫です。カップの保温は厚みや形でも変わります。その考え方は コーヒーが冷めにくいカップの条件 にまとめました。

同協会の産地紹介記事には、窯元の父の代にアメリカ輸出向けのビアジョッキやコーヒーカップを大量につくった時代があった、という話も出てきます。

ひびの入り方も、二重の器の重さも、写真では分かりません。 CAFORAの器も、サンプル で実際に手に取って確かめられます。

カフェの器として大堀相馬焼を見るときの判断軸

私たちCAFORAは瀬戸と美濃で器を焼いています。つくる側から見ると、大堀相馬焼は「ひびと構造で個性をつくっている産地」です。その個性が業務用でどう働くかを分けて考えると、選びやすくなります。

1. 青ひびは、飲み物の色が入る前提で選ぶ ひび割れが器全体を覆い、さらに墨を入れて強調しています。コーヒーやほうじ茶を毎日注げば、ひびの線は時間とともに変わっていきます。それを育つ表情と見るかどうかを、店として決めておくと迷いません。

2. 二重焼は、保温と持ちやすさの両方を確かめる 冷めにくく、熱いお湯を入れても持てる構造です。そのぶん器は二重になります。重さと洗いやすさ、乾きやすさを実物で確認してください。素材ごとの重さや強度の違いは 食器の素材の種類 にまとめました。

3. 走り駒は手描きの個体差を受け入れられるか 馬の絵は一つずつ筆で描かれます。揃った見た目を保ちたい店では、追加発注のときの表情の差を先に確認しておくと安心です。

4. 食洗機・電子レンジの可否は製品ごとに見る 産地名では決まりません。二重構造の器は特に、扱いの条件を製品ごとに確認してください。釉薬そのものの役割は 食器の釉薬とは に書きました。

よくある質問

Q. 大堀相馬焼はどこでつくられていますか 伝統的工芸品産業振興協会は、主要製造地域を福島県双葉郡浪江町としています。福島県の2014年の記事では、原発事故による避難のあと、二本松市内に「陶芸の杜 おおぼり二本松工房」として再開したと紹介されています。

Q. 大堀相馬焼はいつ始まりましたか 同協会は「江戸時代初期(1690年)に作り始められたと言われています」と書いています。

Q. 「青ひび」とは何ですか 青磁釉の表面に、ひび割れが模様のように器全体を覆っている状態です。同協会は、青磁釉の主な原料である砥山石を、この産地のみで採れる原料としています。

Q. 「走り駒」とは何ですか 大堀相馬焼に描かれる馬の絵です。同協会は「この産地だけにある絵のかたち」と書いています。

Q. 二重焼の器はなぜ冷めにくいのですか 同協会の産地紹介記事によれば、大きさの違う器を2個重ねて焼いた二重の構造で、入れたお茶が冷めにくく、熱いお湯を入れても手に持てるとされています。

Q. 大堀相馬焼はカフェの業務用に使えますか 使えます。ただし青ひびには飲み物の色が入りやすく、二重焼は構造上の重さもあります。電子レンジ・食洗機の可否を含め、製品ごとに確認してください。

まとめ

大堀相馬焼とは、福島県双葉郡浪江町の大堀でつくられてきた焼き物です。1690年に始まったと言われ、相馬藩の保護のもとで江戸時代末期には東北最大の産地になりました。

特徴は三つです。器全体をひび割れが覆う青ひび、この産地だけの馬の絵走り駒、そして器を重ねて焼く二重焼。見た目の個性と、使い心地の工夫が一つの器に同居しています。

カフェの器として見るなら、ひびへの色の入り方・二重構造の重さ・手描きの個体差を実物で判断するのが確実です。

CAFORAは、瀬戸と美濃の技術のうえで、バリスタの理想から器を設計しています。大堀相馬焼の器と比べてみたくなったら、瀬戸・美濃で焼いたラテボウル、両手で包む 温 -ON- と、ラテアートを広く見せる 拡 -KAKU- もご覧ください。サンプルは1点から購入できます。

CAFORA