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食器のこと2026.09.20

備前焼とは|釉薬を使わない焼き締めの特徴と、カフェの器での見方

備前焼とは|釉薬を使わない焼き締めの特徴と、カフェの器での見方

備前焼(びぜんやき)は、六古窯のなかでもいちばん分かりやすい産地かもしれません。釉薬を使わない。絵付けもしない。 表面に見えているのは、土と炎がつくった色そのものです。

先に要点を書きます。備前焼は岡山県備前市を中心に、平安時代末から続く六古窯のひとつ。最大の特徴は焼成法で、釉薬を掛けずに松の割木で長時間焼き締めます。その過程で生まれる胡麻(ごま)・桟切(さんぎり)・緋襷(ひだすき)・牡丹餅(ぼたもち)といった表情が、備前焼の見どころです。

この記事では、日本六古窯の公式サイト・備前焼陶友会・岡山県の公式ページの記述をもとに備前焼を整理します。そのうえで、瀬戸と美濃で器を焼いている立場から、カフェの器として備前焼を見るときの判断軸をお伝えします。

備前焼とは:岡山県備前市を中心に、平安時代末から続く六古窯のひとつ

備前焼が焼かれてきたのは、岡山県の南東部です。日本六古窯の公式サイトは、この土地を「岡山県の南東部に位置する備前市は、瀬戸内海に面した温暖な気候を有し」と記しています。

始まりについては、同サイトが次のように書いています。

平安時代末に熊山の麓で碗や皿、瓦などを生産しはじめたことが起源とされています

備前焼陶友会も、備前焼を「古墳時代の須恵器の製法が次第に変化したもの」とし、平安時代に熊山のふもとで生活用器や瓦を焼いたのが始まりだとしています。須恵器から連続している産地という点が、備前の歴史の出発点です。

そこから器の性格が変わっていきます。陶友会によれば、鎌倉時代には壷・甕・擂鉢が主に作られ、この時期から「現在の備前焼特有の赤褐色の焼肌のものが焼かれ始めました」。江戸時代には「窯元六姓(木村・森・頓宮・寺見・大饗・金重)による製造体制が整」いました。

国の伝統的工芸品としては、岡山県の公式ページに指定年月日が「昭和57年11月1日」と明記されています。産地は岡山市・備前市のほか、現在の備前市吉永町、瀬戸内市邑久町・長船町を含む範囲です。

六古窯という枠組みと6産地の比較は 六古窯とは にまとめています。同じ焼き締めの産地である 信楽焼とは・丹波焼とは もそれぞれ記事にしました。

備前焼の特徴は「釉薬を掛けないこと」

備前焼の説明は、どの公式ページもほぼ同じところから始まります。釉薬を使わないということです。

岡山県の公式ページは、こう書いています。

最大の特色は焼成法にあり、形造った素地を釉薬を掛けずに窯詰めし、松割木を使って長時間焼きしめます

日本六古窯の公式サイトも「絵付けや施釉をせず、土の質や成分が焼成した際の景色に良く表れていることが特徴」としています。

釉薬とは、焼くとガラス質の層になって器の表面を覆うものです(詳しくは 食器の釉薬とは)。備前焼にはその層がありません。だから表面に見えているのは、土そのものが高温で焼き固まった状態です。

土は伊部の「干寄」

その土についても、日本六古窯の公式サイトに記述があります。使われる陶土は備前市伊部地区から取れる「干寄(ひよせ)」で、「粘り気が強く、鉄分を多く含み」と説明されています。赤褐色の焼肌は、この鉄分に由来します。

焼成時間は「七〜十昼夜」とも「約2週間」とも記される

焼き方は、備前焼をいちばん特徴づける工程です。ここは出典によって数字の幅があるので、両方そのまま書きます。

  • 日本六古窯の公式サイト:「焼成時、1,200度以上の高温で約2週間かけて焼締める」
  • 備前焼陶友会:「千数百度の炎の力によって七〜十昼夜かけてじっくり焼き締めた」

いずれにせよ、1週間から2週間、窯に火を入れ続けるということです。器をつくる側から見ると、これは非常に長い。焼成時間が長いほど、燃料も、窯を見る人の手間もかかります。備前焼の価格と生産量は、この焼き方と直結しています。

陶友会は、こうして焼き締めたものを硬質の「せっき」と表現しています。炻器(せっき)がどういう位置づけの素材なのかは 食器の素材の種類 にまとめました。

私たちCAFORAは瀬戸・美濃で釉薬を掛けた器を焼いていますが、焼き締めと施釉では、手に取ったときの口当たりがまったく違います。リムの薄さや唇に当たる感触の違いは、言葉より実物のほうが早いので、CAFORAの サンプル で確かめてみてください。

備前焼の窯変:胡麻・桟切・緋襷・牡丹餅

釉薬を掛けないのに、備前焼の表面には色と模様が出ます。窯の中で起きたことが、そのまま景色になるからです。日本六古窯の公式サイトは、これを「胡麻、棧切り、緋襷、牡丹餅などの変化に富んでいます」とまとめています。

備前焼陶友会の説明を引くと、それぞれこうなります。

呼び名

陶友会の説明

胡麻(ごま)

「松割木の灰が焼成中に作品に付着し、胡麻をふりかけたような状態」

桟切(さんぎり)

炭による還元焼成で生成される色合い

緋襷(ひだすき)

「ワラの成分と粘土の鉄分が科学反応をおこし、緋色の線が現れた」もの

岡山県の公式ページは、焼成によって現れるものとして「火だすき、胡麻、桟切、牡丹餅、伏せ焼又は青備前」を挙げています。緋襷は「火だすき」とも表記されます。

ここで押さえておきたいのは、これらが後から付けた装飾ではないということです。灰がどこに降ったか、藁をどう巻いたか、炭がどう当たったか。窯詰めのときの判断と、窯の中の偶然が、そのまま模様になります。窯の中で色が変わる仕組みそのものは 窯変とは に書きました。

裏を返せば、同じ顔の器を数そろえるのは難しいということでもあります。ここがカフェで使うときの最初の判断点になります。

カフェの器として備前焼を見るときの判断軸

魅力のある産地ですが、店で毎日使う器として見るときに確かめたいことがあります。備前焼陶友会が公開している取り扱いの記述が、そのまま判断材料になります。

1. 電子レンジ・食洗機は「使えるが、作品による」 陶友会は「電子レンジ、食器洗浄機はご使用いただけます」としたうえで、「各作家の作品によって、ご使用できない場合がございます」と付け加えています。産地名ではなく、その器をつくった人に確認するのが確実です。

2. 濡れたまま置かない 「濡れたままにしておくとカビや臭いの原因となりますので、しっかり乾かしてください」と明記されています。回転の速い店では、洗った器がすぐ棚に戻ります。乾かす場所と時間を確保できるかを先に考えてください。釉薬の層がない器と、ある器の違いは 陶器と磁器の違い も参考になります。

3. 器肌がなめらかではない 陶友会は、備前焼は「器肌がなめらかではありません」とし、傷がつきやすいので布製の敷物を使うよう案内しています。テーブルやソーサーとの相性を見ておくとよいでしょう。

4. 直火不可・急激な温度変化に注意 「直接火に当てないようにしてください」「急激な温度変化で破損する場合がございます」とあります。熱いドリンクを注ぐ前に器を温めるかどうかも、使い方の設計に入ります。

5. 後から買い足せるか 業務で使えば器は必ず割れます。窯変は1点ずつ表情が違うので、どの作り手の、どの焼き方のものかまで記録しておくと、追加発注のときに困りません。産地名で器の性格を決めつけられない理由は 日本の焼き物の種類 にも書いています。

よくある質問

Q. 備前焼はなぜ釉薬を使わないのですか それが備前焼の焼成法だからです。岡山県の公式ページは「最大の特色は焼成法にあり、形造った素地を釉薬を掛けずに窯詰めし、松割木を使って長時間焼きしめます」と説明しています。釉薬を掛けない代わりに、灰や炭、藁が器の表面に景色をつくります。

Q. 備前焼はいつから焼かれていますか 日本六古窯の公式サイトは「平安時代末に熊山の麓で碗や皿、瓦などを生産しはじめたことが起源とされています」としています。備前焼陶友会は、そのもとを古墳時代の須恵器の製法に求めています。

Q. 備前焼はどれくらいの時間をかけて焼きますか 日本六古窯の公式サイトは「1,200度以上の高温で約2週間かけて焼締める」、備前焼陶友会は「千数百度の炎の力によって七〜十昼夜」と記しています。出典によって幅がありますが、いずれも1週間以上に及びます。

Q. 備前焼は電子レンジや食洗機で使えますか 備前焼陶友会は「電子レンジ、食器洗浄機はご使用いただけます」としています。ただし「各作家の作品によって、ご使用できない場合がございます」とあるので、購入時に個別に確認してください。

Q. 胡麻と緋襷はどう違いますか 胡麻は松割木の灰が付着してできる表情、緋襷は藁の成分と粘土の鉄分が反応して緋色の線が現れたものです。どちらも焼成中に生まれる窯変で、絵付けではありません。

まとめ

備前焼とは、岡山県備前市を中心に、平安時代末から続く六古窯のひとつです。昭和57年11月1日に国の伝統的工芸品に指定されています。

最大の特徴は、釉薬も絵付けもせず、松割木で長時間焼き締めること。鉄分の多い伊部の土「干寄」と、1週間から2週間に及ぶ焼成が、赤褐色の肌と胡麻・桟切・緋襷・牡丹餅といった窯変を生みます。

カフェの器として選ぶときは、産地名ではなく、電子レンジ・食洗機の可否/乾かす手間/器肌の状態/温度変化/買い足せるかの5点を、つくり手に確認するのが確実です。

CAFORAは、六古窯のひとつである瀬戸と、隣り合う美濃の技術のうえで、バリスタの理想から器を設計しています。その瀬戸・美濃で焼いているのが、両手で包む 温 -ON- と、ラテアートを広く見せる 拡 -KAKU- です。焼き締めの備前と、釉薬をかけた器の口当たりの違いは、サンプル1点から確かめられます。

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