壺屋焼とは|沖縄のやちむんの特徴と、上焼・荒焼の違いと器の選び方
沖縄の器を「やちむん」と呼ぶことは知っていても、同じ産地のなかに釉薬をかける器と、かけない器の二系統があることまでは、あまり知られていません。カフェで使う器を選ぶとき、この区別がそのまま判断材料になります。
先に要点を書きます。壺屋焼とは、沖縄県那覇市の壺屋を中心につくられる焼き物です。1682年に三つの窯を一か所に集めたことから始まり、釉薬をかけて約1200度で焼く「上焼(じょうやち)」と、釉薬をかけずに1120度前後で焼く「荒焼(あらやち)」に大きく分かれます。
この記事では、壺屋陶器事業協同組合と伝統的工芸品産業振興協会の記述をもとに、壺屋焼の成り立ちと二つの系統を整理します。そのうえで、瀬戸と美濃で器を焼いている立場から、カフェの器として壺屋焼を見るときの判断軸をお伝えします。
壺屋焼とは:三つの窯を一か所に集めて始まった産地
壺屋焼の始まりは、はっきりした年と出来事で説明できます。壺屋陶器事業協同組合は1682年の出来事をこう記しています。
知花、湧田、宝口の三窯場を牧志邑の南(現在の壺屋)に統合する、壺屋焼の始まり
伝統的工芸品産業振興協会も同じ経緯を、次のように書いています。
17世紀後半、琉球王府によって美里の知花窯(ちばなかま)、首里の宝口窯(たからぐちがま)、那覇の湧田窯(わくたがま)が、現在の壺屋町に統合され誕生しました
自然に窯場が育ったのではなく、政策として一か所に集められて生まれた産地です。瀬戸や美濃のように土のあるところに窯が集まった産地とは、成り立ちが違います。日本の産地ごとの成り立ちは 日本の焼き物の種類 に整理しています。
伝統的工芸品としての指定年月日は昭和51年6月2日、主要製造地域は那覇市、国頭郡恩納村、中頭郡読谷村です。壺屋という地名が産地名になっていますが、指定上の産地は那覇市だけではありません。
上焼と荒焼の違い:釉薬をかけるかどうか、焼く温度
伝統的工芸品産業振興協会は、沖縄の焼き物の分類をこう書いています。
沖縄の焼物(やちむん)は、上焼(じょうやち)と荒焼(あらやち)に大別されます
壺屋陶器事業協同組合の説明はさらに具体的です。
上焼は、釉薬をかけ約1200度の高温で焼かれたものです。碗、皿、鉢、カラカラ、壺などの日常生活用品が多く、壺屋焼の主流を占めています。荒焼は、南蛮焼ともいわれ釉薬をかけないで1120度前後で焼きあげます。製品は酒甕、水甕類などの大型の容器を中心に作られています
整理すると、こうなります。
上焼(じょうやち) | 荒焼(あらやち) | |
|---|---|---|
釉薬 | かける | かけない |
焼成温度 | 約1200度 | 1120度前後 |
主な製品 | 碗・皿・鉢・カラカラ・壺 | 酒甕・水甕などの大型容器 |
別名 | — | 南蛮焼 |
カフェの食器として候補になるのは、基本的に上焼のほうです。 釉薬をかけて高い温度で焼くため、汚れが染み込みにくく、洗って繰り返し使う前提に合います。釉薬という層そのものの役割は 食器の釉薬とは に、素材ごとの吸水性や強度の違いは 食器の素材の種類 にまとめました。
荒焼が向かないという話ではありません。酒甕や水甕という用途に合わせて、あえて釉薬をかけない選択をしている器です。用途が違います。
重さも口当たりも、写真では分かりません。 CAFORAの器も、サンプル で実際に手に取って確かめられます。
壺屋焼の加飾:削る・彫る・描くが並んでいる
壺屋焼の見た目の幅は、加飾の種類の多さから来ています。壺屋陶器事業協同組合は、施釉と加飾の方法を次のように挙げています。
施釉の方法には、浸し掛、流し掛、振り掛、布掛などがあります。又、加飾の方法には、刷毛目、象がん、印花、掻き落とし、線彫、飛ばしカンナ、赤絵、盛り付け、貼り付けなどがあります
注目したいのは、性質の違う技法が一つの産地に同居していることです。
- 削る・彫る系… 掻き落とし、線彫、飛ばしカンナ
- 押す・埋める系… 印花、象がん
- 描く・盛る系… 刷毛目、赤絵、盛り付け、貼り付け
「飛ばしカンナ」は、福岡の 小石原焼 でいう飛び鉋と同じ系統の、刃先で表面を削っていく技法です。焼いたあとに色を乗せる赤絵の考え方は 上絵付けと下絵付けの違い に整理しています。
一つの産地のなかで、器の表情が大きく変わるということです。「壺屋焼らしい見た目」を一つに決められないのは、そのためです。
カフェの器として壺屋焼を見るときの判断軸
私たちCAFORAは瀬戸と美濃で器を焼いています。つくる側から見ると、壺屋焼は「用途で二系統に分かれている産地」です。選ぶときは、まずそこを分けて考えるのが確実です。
1. 上焼か荒焼かを最初に確認する 飲食に使う器なら上焼です。釉薬の有無で、汚れの入り方も洗い方も変わります。貫入や吸水がある器の扱いは、産地ではなく製品ごとに確認してください。
2. 厚みと重さを実物で確かめる やちむんは厚手の器が多く見られます。片手で運ぶ回数が多い業務用では、重さがそのまま負担になります。数値ではなく持って判断してください。
3. 加飾の種類で個体差の出方が変わる 削り・彫りの技法は手の動きが出るため、一枚ずつ表情が違います。揃った見た目を保ちたい店では、そこを先に確認しておくと安心です。
4. 食洗機・電子レンジの可否は製品ごとに見る 産地では決まりません。毎日洗う業務用なら、最優先の確認項目です。登り窯で焼かれた器の性格については 登り窯と穴窯の違い も参考になります。
よくある質問
Q. 壺屋焼と「やちむん」は同じものですか 「やちむん」は沖縄の焼き物全般を指す言い方です。伝統的工芸品産業振興協会は「沖縄の焼物(やちむん)は、上焼(じょうやち)と荒焼(あらやち)に大別されます」と書いています。壺屋焼は、そのなかの産地名です。
Q. 壺屋焼はいつ始まりましたか 壺屋陶器事業協同組合は1682年に「知花、湧田、宝口の三窯場を牧志邑の南(現在の壺屋)に統合する」ことが始まりだとしています。
Q. 上焼と荒焼はどう違いますか 釉薬の有無と焼成温度が違います。同組合によれば、上焼は釉薬をかけ約1200度、荒焼は釉薬をかけず1120度前後で焼かれます。
Q. 荒焼はなぜ釉薬をかけないのですか 酒甕・水甕といった大型の容器を中心につくる系統だからです。同組合は荒焼を「南蛮焼ともいわれ」と記しています。
Q. 壺屋焼はどこでつくられていますか 伝統的工芸品産業振興協会は、主要製造地域を那覇市、国頭郡恩納村、中頭郡読谷村としています。
Q. 壺屋焼はカフェの業務用に使えますか 上焼であれば使えます。ただし厚手で重い器が多く、加飾によって個体差も出ます。重さ・扱いの条件・追加発注の可否を、製品ごとに確認してください。
まとめ
壺屋焼とは、沖縄県那覇市の壺屋を中心につくられる焼き物です。1682年に琉球王府が知花・湧田・宝口の三つの窯を一か所へ統合したことから始まりました。指定年月日は昭和51年6月2日、主要製造地域は那覇市・恩納村・読谷村です。
最大の分かれ目は上焼と荒焼です。上焼は釉薬をかけて約1200度で焼く日常の器、荒焼は釉薬をかけず1120度前後で焼く大型の容器で、同じ産地のなかで用途がはっきり分かれています。
カフェの器として見るなら、まず上焼かどうかを確認し、そのうえで厚み・重さ・個体差の出方を実物で判断するのが確実です。
CAFORAは、瀬戸と美濃の技術のうえで、バリスタの理想から器を設計しています。壺屋焼の器と比べてみたくなったら、瀬戸・美濃で焼いたラテボウル、両手で包む 温 -ON- と、ラテアートを広く見せる 拡 -KAKU- もご覧ください。サンプルは1点から購入できます。

