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食器のこと2026.09.21

伊万里焼とは|有田焼・鍋島焼との違いと、名前が分かれた理由

伊万里焼とは|有田焼・鍋島焼との違いと、名前が分かれた理由

伊万里焼(いまりやき)を調べ始めると、すぐに有田焼と鍋島焼という2つの名前が並んで出てきます。同じもののようでもあり、違うもののようでもある。ここで迷う人はとても多いと思います。

先に要点を書きます。伊万里焼という名前には、時代によって2つの意味があります。 江戸時代には、肥前(いまの佐賀・長崎県)で焼かれ、伊万里の港から積み出された磁器全体を指していました。いまは、伊万里市の大川内山(おおかわちやま)で焼かれている器を指すことが多く、こちらは鍋島焼の伝統を受け継ぐ器です。

この記事では、伊万里市と伊万里鍋島焼協同組合の公式ページの記述をもとに、この名前の分かれ方を整理します。そのうえで、瀬戸と美濃で器を焼いている立場から、カフェの器として伊万里焼を見るときの判断軸をお伝えします。

伊万里焼とは:伊万里の港から積み出された肥前の磁器

伊万里市の公式サイトは、伊万里焼をこう説明しています。

江戸時代に肥前(佐賀・長崎県)で焼かれた磁器をひっくるめて伊万里焼と呼びます。伊万里津(港)から船で各地へ積みだされていったからです。

伊万里焼は、焼いた場所ではなく、積み出した港の名前でした。 有田をはじめとする肥前の窯で焼かれた磁器は、伊万里の港から船で全国へ運ばれました。受け取った側から見れば「伊万里から来た器」なので、伊万里焼と呼ばれたわけです。

同じページは、続けてこう書いています。

伊万里焼は商品として民間の窯で大量につくられました。

つまり江戸時代の伊万里焼は、民間の窯が数をつくって売った商品でした。この点が、あとで出てくる鍋島焼との大きな違いになります。

なお、伊万里焼は磁器です。石を砕いた原料からつくる磁器と、土からつくる陶器の違い——吸水しにくさ、薄さ、口当たり——は 陶器と磁器の違い にまとめました。

伊万里焼と有田焼の違い:港の名前と、産地の名前

有田焼との関係は、港と産地の関係です。江戸時代の器をいま「古伊万里」と呼ぶことがありますが、その多くは有田で焼かれたものです。

伊万里市の公式サイトは、現代への継承をこう整理しています。

江戸時代の伊万里焼(古伊万里)の伝統を受け継いでいるのが有田焼です。

江戸時代の「伊万里焼」の本流は、いまの有田焼につながっているということです。有田で泉山の陶石が見つかり、日本で初めて磁器が焼かれた経緯は 有田焼とは に詳しく書きました。

国の伝統的工芸品としての名称も、この歴史を反映しています。伊万里市の公式サイトによれば、「昭和52年に『伊万里焼』・『有田焼』が国の伝統工芸品に指定された」とあり、指定名称は「伊万里・有田焼」です。2つの名前が1つの伝統的工芸品として並んでいるのは、もともと同じ器の流れを別の角度から呼んでいたからです。

伊万里焼(江戸時代の意味)

有田焼

名前の由来

積み出した港(伊万里津)

焼いた産地(有田)

指していたもの

肥前で焼かれた磁器全体

有田町とその周辺の磁器

つくり手

民間の窯

民間の窯

現在

伝統は有田焼が受け継ぐ

伊万里・有田焼として伝統的工芸品に指定

鍋島焼とは:大川内山の藩窯で焼かれた献上の器

もう1つの名前が鍋島焼です。伊万里鍋島焼協同組合は、大川内山についてこう書いています。

大川内山は江戸時代、佐賀藩(鍋島家)の御用窯(ごようがま)が置かれた地で、朝廷・将軍家・諸大名などへ献上する高品位な焼物が焼かれていた。

伊万里市の公式サイトは、鍋島の性格を伊万里焼と対比させています。伊万里焼が民間の商品だったのに対し、鍋島は「将軍家への献上、幕府の重臣や他藩の大名などへの贈り物のためだけに」、藩の窯でつくられました。

数の違いも具体的です。同サイトによれば、鍋島は「1年間におよそ5千個ほどと決まっていました」。一方で「伊万里焼は年間何10万個もつくられました」。同じ肥前の磁器でも、売るための器と、贈るための器では、つくり方の前提がまったく違ったということです。

伊万里市の公式サイトが挙げる鍋島の種類は3つです。

  • 染付:「白磁に呉須(藍色)絵の具だけで描かれたもの。」
  • 色絵:「染付に主に赤・黄・緑で絵つけされたもの。」
  • 青磁:「深い青緑色の釉薬がかかったもの。」

絵付けには細かな決まりがあり、同サイトは「絵つけは輪郭線からはみ出しません」「線は一定の太さです」と記しています。規則を守ることで、どの1枚も同じ品質にそろえる。 献上品らしい考え方です。

現代の伊万里焼:鍋島の伝統を受け継ぐ大川内山の器

では、いま「伊万里焼」と言ったときは何を指すのか。伊万里市の公式サイトは、先ほどの有田焼の一文に続けてこう書いています。

鍋島の伝統を受け継いでいるのが大川内山で焼かれている現代の「伊万里焼」です。

現代の伊万里焼は、有田焼の流れではなく、鍋島の流れにある器です。 ここが一番混乱しやすいところなので、時代で分けて覚えるのが確実です。

  • 江戸時代の「伊万里焼」→ いまの有田焼へ
  • 江戸時代の「鍋島」→ いまの大川内山の伊万里焼へ

藩窯そのものは、伊万里市の公式サイトによれば「明治3年(1870年)に鍋島藩窯が廃止」されました。伊万里鍋島焼協同組合は、その後の技法が「今泉今右衛門家によって近代工芸として復興され、21世紀に至っている」としています。いまの大川内山には、同組合によれば約30軒の窯元が並び、鍋島青磁・色鍋島・鍋島染付の技法が受け継がれています。

器の表面にある染付と色絵の違い——釉薬の下に描くか、上に描くか——は 上絵付けと下絵付けの違い に、青磁の青を生む釉薬という層の役割は 食器の釉薬とは にまとめました。

名前が分かれたことから、器選びで学べること

私たちCAFORAは瀬戸と美濃で器を焼いています。瀬戸にも、産地名が器全体の呼び名になった「せともの」という言葉があります(瀬戸焼とは)。産地の名前は、つくった人ではなく、受け取った人の側で広まることがある。伊万里焼はその典型です。

これは器選びにもそのまま当てはまります。「伊万里焼」「有田焼」という名前だけでは、その器が量産の日用品なのか、少数を丁寧につくる器なのかは分かりません。江戸時代でさえ、同じ肥前の磁器に年間数十万個の商品と、年5千個ほどの献上品が並んでいました。

名前ではなく、実物の重さ・口当たり・リムの厚みで選ぶ。店の器を決めるときに一番確かなのは、この順番です。CAFORAの器も、サンプル で実際に手に取って確かめられます。

カフェの器として伊万里焼を見るときの判断軸

磁器なので、吸水しにくく、業務用との相性は悪くありません。そのうえで確かめたい点があります。

1. 絵付けが釉の下か上か 染付は釉薬の下、色絵の赤・黄・緑は釉薬の上にあります。上絵は表面に出ているので、洗浄や電子レンジの条件が変わります。 金彩があるものは特に、製品ごとに可否を確認してください。

2. 同じ品を買い足せるか 大川内山の器は窯元ごとの仕事です。業務で使えば器は必ず割れるので、同じ柄・同じ形を後から追加できるかを最初に聞いておくと困りません。

3. 1客の存在感が、店の出し方に合うか 鍋島の流れにある器は、1枚ごとの絵付けの密度が高いものが多くあります。主役の一皿に使うのか、毎日回す器に使うのかで、選ぶべきものが変わります。

4. 産地名ではなく、製品の表示で決める 食洗機・電子レンジの可否は産地名では決まりません。日本の産地と素材の関係は 日本の焼き物の種類 に整理しました。

よくある質問

Q. 伊万里焼と有田焼は同じものですか 江戸時代には同じ流れの器を指していました。伊万里市の公式サイトは、江戸時代に肥前で焼かれた磁器を「ひっくるめて伊万里焼と呼びます」とし、その理由を伊万里の港から積み出されたためとしています。いまは「江戸時代の伊万里焼(古伊万里)の伝統を受け継いでいるのが有田焼」とされています。

Q. 現代の伊万里焼はどこで焼かれていますか 伊万里市の大川内山です。伊万里市の公式サイトは「鍋島の伝統を受け継いでいるのが大川内山で焼かれている現代の『伊万里焼』です」としています。

Q. 鍋島焼とは何ですか 江戸時代に佐賀藩が大川内山の藩窯で焼いた磁器です。伊万里市の公式サイトによれば、将軍家への献上や大名などへの贈り物のためだけにつくられ、数は1年間におよそ5千個ほどと決まっていました。

Q. 伊万里焼は陶器ですか、磁器ですか 磁器です。伊万里市の公式サイトは、伊万里焼を「肥前(佐賀・長崎県)で焼かれた磁器」の総称として説明しています。

Q. 伊万里焼はカフェの業務用に使えますか 使えます。ただし上絵や金彩のある器は扱いの条件が変わるので、食洗機・電子レンジの可否と、同じ品を買い足せるかを発注前に確認してください。

まとめ

伊万里焼とは、もともと江戸時代に肥前で焼かれ、伊万里の港から積み出された磁器の総称でした。名前は産地ではなく港から来ています。その江戸時代の伊万里焼の伝統は、いまの有田焼が受け継いでいます。

一方、佐賀藩が大川内山の藩窯で献上用に焼いた鍋島の伝統は、いまの大川内山で焼かれる現代の伊万里焼が受け継いでいます。同じ「伊万里焼」でも、時代によって指すものが違う——ここを押さえれば混乱はなくなります。

カフェの器として選ぶときは、名前ではなく、絵付けが釉の上か下か/買い足せるか/器の存在感が出し方に合うか/製品の表示で決めるのが確実です。

CAFORAは、瀬戸と美濃の技術のうえで、バリスタの理想から器を設計しています。伊万里焼の器と比べてみたくなったら、瀬戸・美濃で焼いたラテボウル、両手で包む 温 -ON- と、ラテアートを広く見せる 拡 -KAKU- もご覧ください。サンプルは1点から購入できます。

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