Journal
食器のこと2026.09.23

砥部焼とは|厚手の白磁と藍の染付が生まれた理由と器の選び方

砥部焼とは|厚手の白磁と藍の染付が生まれた理由と器の選び方

「割れにくい器を探している」とバリスタの方から相談を受けたとき、候補に挙がることが多いのが砥部焼です。白い磁器に藍の絵付け、そして手に取るとはっきり分かる厚み。写真より実物のほうが印象に残る器だと思います。

先に要点を書きます。砥部焼とは、愛媛県砥部町を中心につくられる磁器です。砥部町は、その特色を「清らかな白磁の肌に藍の絵模様」「やや厚手の飾り気のない形」「材質の堅さ」の三つで説明しています。そして産地の始まりは、砥石を切り出したあとに出る砥石くずでした。

この記事では、砥部町と伝統的工芸品産業振興協会の公式の記述をもとに、砥部焼の成り立ちと特徴を整理します。そのうえで、瀬戸と美濃で器を焼いている立場から、カフェの器として砥部焼を見るときの判断軸をお伝えします。

砥部焼とは:愛媛県砥部町を中心につくられる磁器

砥部焼は国の伝統的工芸品です。伝統的工芸品産業振興協会によれば、指定年月日は昭和51年12月15日、主な製造地域は「松山市、伊予郡松前町、砥部町」です。砥部町はさらに、平成17(2005)年に愛媛県の無形文化財にも指定されたと記しています。

産地の規模について、砥部町は「約100軒の窯元」があり、それぞれが個性ある器をつくっていると説明しています。ひとつの大きな工場がある産地ではなく、小さな窯元が集まっている産地だということです。

砥部焼は磁器です。土からつくる陶器とは、吸水・強度・口当たりの性格が違います。その違いは 陶器と磁器の違い と 食器の素材の種類 にまとめました。日本の産地ごとの成り立ちは 日本の焼き物の種類 に整理しています。

砥部焼の始まり:砥石くずと、肥前から来た陶工

砥部焼を面白くしているのは、始まりの理由です。砥部町はこう書いています。

江戸時代、この地の陶工は、砥石くずを原料に器を作り、豊富な松の木を燃料に登窯で砥部焼を焼いていました。約250年たった今も、その歴史と伝統は生かされています。

刃物を研ぐ砥石の、切りくずが原料だった。 磁器の原料である陶石と、砥石の石はもともと同じ系統の石です。つまり砥部焼は、「良い土があったから」ではなく「手元にあった石の使い道として」始まった産地だということになります。

もう一方の当事者も記録に残っています。伝統的工芸品産業振興協会は、始まりをこう説明しています。

江戸時代中期に、藩主が地元の陶石を原料に磁器を生産させて藩の財政の助けにしようと考え、磁器の産地として知られていた現在の長崎県の肥前から陶工を連れてきたのが始まりです。

地元の石 × 肥前の技術という組み合わせです。肥前は 有田焼・波佐見焼 の産地で、日本の磁器の技術がまとまっていた場所でした。ここから技術者が動いたことで、四国に磁器の産地が生まれています。

燃料が松、窯が登窯だったという点も見逃せません。窯の形で焼き上がりがどう変わるかは 登り窯と穴窯の違い にまとめました。

砥部焼の特徴:やや厚手で、堅い

砥部町が挙げる三つの特色のうち、業務で使う器として効いてくるのは「やや厚手の飾り気のない形」と「材質の堅さ」です。

磁器は本来、薄くつくれる素材です。薄く挽いて軽さや透明感を出す産地も多いなかで、砥部焼は厚みを残す方向に寄っています。飾り気のない形という説明も、装飾より実用の側に軸足があることを示しています。

装飾は藍の染付が中心です。伝統的工芸品産業振興協会は、砥部焼をこう説明しています。

地元でとれる陶石を用いた温かみのある素地を生かし、それに大胆な筆使いの文様を青色で描いた染付(そめつけ)の食器や、天然の灰を使った柔らかい発色の青磁の花器等は実用的でしかも温かみのある独特のものです。

「大胆な筆使い」という表現がそのまま特徴です。染付は釉薬の下に絵を描く下絵付けで、絵の上から釉薬がかかります。上絵付けとの違いと、それぞれの扱いやすさは 上絵付けと下絵付けの違い にまとめました。

指定されているのは4種類:白磁・染付・青磁・天目

砥部焼というと白地に藍の染付を思い浮かべますが、それだけではありません。砥部町は、伝統的工芸品として指定されている種類をこう記しています。

白磁、染付作品、青磁、天目(鉄釉)の四種類が指定されています。いずれも地元の陶石原料を生かした作品で、実用性や現代性を兼ね備えたデザインが多いため、全国に多くのファンがいます。

白一色の白磁、藍で描く染付、灰の釉薬による青磁、そして鉄釉の天目。同じ産地の中に、白から黒まで幅があるということです。鉄を含む釉薬が焼き方で色を変える仕組みは 天目茶碗とは に書きました。

産地の現在についても、砥部町は「最近は、若い人による、素材や伝統的デザインにとらわれない作品も多く見られるようになり、手仕事の味を生かした産地として注目されています」としています。産地名だけでは見た目が決まらないという点は、カフェで使う器を選ぶときに効いてきます。

「厚み」は業務用でどう効くのか

私たちCAFORAは瀬戸と美濃で器を焼いています。つくる側から見ると、厚みは単純に「丈夫かどうか」だけの話ではありません。

  • 厚みは、縁が欠けにくい方向に働く。 業務用で割れるのは落下より、洗い場や重ねたときの接触が多いためです
  • 厚みは、重さになる。 一日に何十杯と運ぶ人にとって、重さは確実に効いてきます
  • 厚みは、口当たりを変える。 リムの厚みは飲み口の印象を左右します(→ コーヒーカップの口当たりはリムで決まる)

つまり「厚手=良い」でも「薄手=良い」でもなく、その店の使い方でどちらが向くかが決まります。

重さも口当たりも、写真では分かりません。 CAFORAの器も、サンプル で実際に手に取って確かめられます。

カフェの器として砥部焼を見るときの判断軸

1. 重さを実物で確かめる 厚手であることは公式の説明に明記されています。何十杯と運ぶ前提なら、まず重さを測ってください。

2. 絵付けの種類を確認する 染付(下絵付け)か、上から描いた絵付けかで、扱いの条件が変わります。

3. 食洗機・電子レンジの可否は製品ごとに見る 産地では決まりません。業務用で毎日洗うなら、窯元ごとに確認するのが確実です。

4. 追加発注できるかを最初に聞く 窯元が約100軒ある産地です。同じ絵柄・同じ形を買い足せるかを、最初の発注時に確認しておくと安心です。

よくある質問

Q. 砥部焼はどこでつくられていますか 伝統的工芸品産業振興協会は、主な製造地域を「松山市、伊予郡松前町、砥部町」としています。

Q. 砥部焼はいつから焼かれていますか 砥部町は「約250年」の歴史があるとしています。伝統的工芸品産業振興協会は、江戸時代中期に藩主が肥前から陶工を招いたのが始まりだと説明しています。

Q. 砥部焼は陶器ですか、磁器ですか 磁器です。地元でとれる陶石を原料にしています。砥部町は、江戸時代には砥石くずを原料に器がつくられていたと記しています。

Q. 砥部焼の種類にはどんなものがありますか 砥部町によれば、伝統的工芸品として指定されているのは「白磁、染付作品、青磁、天目(鉄釉)の四種類」です。

Q. 砥部焼はいつ伝統的工芸品に指定されましたか 伝統的工芸品産業振興協会によれば、指定年月日は昭和51年12月15日です。砥部町は、平成17(2005)年に愛媛県の無形文化財にも指定されたとしています。

Q. 砥部焼はカフェの業務用に使えますか 使えます。砥部町は特色として「やや厚手の飾り気のない形」「材質の堅さ」を挙げています。ただし重さ・食洗機/電子レンジの可否・追加発注の可否は産地では決まらないため、製品ごとに確認してください。

まとめ

砥部焼とは、愛媛県砥部町を中心につくられる磁器です。江戸時代に砥石くずを原料として始まり、藩主が肥前から陶工を招いたことで磁器の産地になりました。指定年月日は昭和51年12月15日、主な製造地域は松山市・伊予郡松前町・砥部町です。

特徴は「清らかな白磁の肌に藍の絵模様」「やや厚手の飾り気のない形」「材質の堅さ」の三つ。指定されている種類は白磁・染付・青磁・天目(鉄釉)の四つで、白一色から黒まで幅があります。

カフェで使うなら、厚みが生む丈夫さと重さの両方を、実物を持って確かめるのが確実です。

CAFORAは、瀬戸と美濃の技術のうえで、バリスタの理想から器を設計しています。砥部焼の器と比べてみたくなったら、瀬戸・美濃で焼いたラテボウル、両手で包む 温 -ON- と、ラテアートを広く見せる 拡 -KAKU- もご覧ください。サンプルは1点から購入できます。

CAFORA